第21章 桜舞う、君との約束※
神楽家に女児が産まれていたという事実はつい最近知ったこと。
その前に神楽家が鬼舞辻無惨の襲撃を受けて全滅したと言う事実を知り絶望をしてからそう日が経っていなかった。
鬼殺隊という鬼狩り集団を産屋敷家が作り上げて、無惨を倒そうとしているのは勿論知っていた。しかし、首を斬るだけで無惨を殺すことは不可能だと思っていたため、私は彼を内側から追い詰めるために毒の開発をしていた。
神楽家は代々、薬師を妻として娶っていた。それが何故か…
神楽家が鬼舞辻無惨を鬼にした医師の血筋で、あの男を追い詰めるための唯一の知識を持っていたからだ。
しかし、それだけでは何百年と人を喰らい続けて力を増大させている無惨を追い詰めることもまた難しいとも思っていた。
産屋敷家の鬼殺隊の力をもってしても
神楽家の陰陽道や薬の知識をもってしても
鬼舞辻無惨を倒すことは困難を極める。
しかし、希望の光もある。
それが神楽家に女児が産まれることだった。神楽家から産まれる女児は皆、総じて二つの能力を備えて産まれてくる。
一つ目は長けた治癒能力。手をかざすだけで人の痛みや怪我を治してしまう不思議な能力だが、反動で自分の体を傷める。許容量は人によって違うが、多くの女児が使い過ぎたことで体が反動に耐えきれずに死んでいる。
それ故、女児が産まれると能力を使わないように言い付けるのが最初の子育てとも言えるほどだった。
二つ目はその治癒能力が鬼にとっては毒になるということ。
二つの能力と言っても産まれた女児からすれば一つの能力を授かっただけだが、相反する側面は一つの能力が二つの効力があるということになる。
それが分かったのは無惨の側近であった鬼が何百年も前に神楽家の女児を喰らった時。
強くなるどころか食べ始めてすぐに蒸発するように消し飛んだ鬼を見て私は打ち震えた。
当時、側近と言うだけあり、なかなかの強さを誇っていた鬼がその子を食べ始めた瞬間、消し飛ぶほどの威力。
神楽家の女児の不思議な能力を使えば無惨を倒せるかもしれない。
だが、それもまた問題はあった。
神楽家で女児が生まれることは極めて稀だったのだ。