第21章 桜舞う、君との約束※
──それは突然の出会い
宇髄さん達とお墓参りに行った翌日、任務を言い渡されたので一人鬼狩りに向かった。
すぐに首を斬ってしまえるほどでそこまで強くない鬼を始末すると、夜明け前に帰路に着いていた。
宇髄さんも今日は任務に出掛けているし、急いだところで仕方ないが、不気味なほど静かな夜は一人だと少しだけ寂しい。
早く宇髄さんに会いたいと思いながら歩いていると前から男女二人組が現れた。
こんな時間に一般人が彷徨いているなんておかしいし、どうも雰囲気が人間のそれと違う気がした。
(…鬼?いや、でも…殺気は感じない。)
まだ少し距離があるので様子を見て、鬼ならば首を斬らないといけないので、臨戦態勢のまま近づく。
「神楽ほの花さんですね?」
しかし、私の名前をぴたりと当てられてしまうと驚いて固まってしまう。
見たことのない二人組。
綺麗な女性と寄り添うように近くに控えている青年。
名前を知られていることに若干の恐怖を感じたが、深呼吸をして舞扇を構えた。
「…おい、珠世様に武器を向けるな。」
「た、たまよ様?」
「愈史郎、駄目よ。女性には優しくね?」
「はい。珠世様。」
どうやら主従関係でも結ばれているのだろうか。
珠世様と呼ばれた女性にはあまりに従順なその青年の言動に狼狽えた。
「…一体、あなた達は…。」
鬼のような空気感なのにいつも対峙してきた鬼とはまるで違う。
どうしたら良いのか分からないながらも気を抜くこともできない。
「陰陽師の末裔で弥古都の子孫ですね。」
"陰陽師"と言うことまで知っている。全身から冷や汗が流れ出る。しかし、子孫と言われた人の名前は全く身に覚えがない。
頭が爆発しそうなほど動揺して考えがまとまらない。
一体どういうことなのだ。
「…み、みことさんという方は知らないです。」
「ええ、そうでしょう。貴女の母である灯里よりももっと遡らなければなりませんから。」
母の名前すら知っているこの珠世という人物に会ったのはこの日が初めて。
でも、その出会いによって自分のことを初めてちゃんと知ることができたのだ。
まだ緊張感が続く中、私はゆっくりと舞扇を下ろして彼女達と向き合った。