第21章 桜舞う、君との約束※
ほの花たちの陰陽師の里の話をツマミに酒を飲み、飯を喰らっているとあっという間に時間が過ぎていった。
「さ、そろそろ帰るか。桜も見納めだな。」
「…また来年、ですね。」
寂しそうにそうやって言うほの花の肩を抱くと雛鶴がぽつりと話し出した。
「もし、…上弦の鬼を倒したら、天元様も柱は引退してみんなでゆっくり暮らしましょう。」
「…雛鶴。」
「そして、来年も再来年もずっとみんなで桜を見ましょう。その時、誰一人として欠けていないことを祈ってますけど、もし、欠けていたとしても恨みっこなしです。」
誰一人として欠けることなく…か。
上弦の鬼と対峙したら正直、どうなるか分からない。コイツらを守りきれるかどうかも分からない。それほど強大な鬼だと言うことだけ分かっている。
それでも里を抜ける時に元嫁達は守り切ると決めてきたし、今はほの花たちもいる。自分一人では前向きな未来を想像すら出来ずにいると隣にいたほの花が俺の腕を掴み、微笑んだ。
「…みんなで生き残りましょう。そしてまたこの桜をみんなで見ましょうね。約束です。」
「ほの花さん…、…はい!」
「宇髄さんの背中は私が守るので大丈夫です!」
ほの花も鬼殺隊だ。何度も任務についているのだからそれがどれほど難しいことなのかちゃんと分かっている筈だ。
それでもすぐに言葉が出ない俺の背中を押してくれる。やはり此処に来るとらしくねぇ考えが頭を過ぎってしまう。
大丈夫だと言うほの花の瞳は俺をしっかりと見てくれている。
「…ばぁか。お前は俺に守られてりゃいいの。」
「えー?私だっていざとなれば宇髄さんを守りますよ!」
必ず守ってやるという強い意志はあるのに、それ以上にほの花が俺のために平気で命を投げうってきそうな恐怖も同時に感じた。
それでも前を向くしかない。
俺たちの未来は鬼を倒したその先にあるのだから。
「…全員で生き残るんだろ。約束忘れんなよ。」
「うん。忘れない!約束する!」
そう言って笑うほの花だが、目は真剣だった。
そんな彼女の手を離すまいと強く強く握ると、優しく吹いた風が桜吹雪となり彼女の髪を散らす。
その姿はまるで天女のように美しかった。