第21章 桜舞う、君との約束※
ずっと感じてきた違和感。
口に出してしまえばやはりそれは間違いないと思えてしまう。
私は…知らないことが多すぎる。
大切に育てられたから知らずに済んできたのだと思い込んできたが、大進の発言を聞いて確信に近いものを感じてしまった。
私は幼い時の記憶が途切れ途切れな気がする。
しかもそれのほとんどが陰陽師に関係することばかり。
知っていたことは先程みんなの前で全て話した。
しかし、うちの家に100年間も女児が生まれなかったことも知らなかったし、兄達のように陰陽道もできるものが少なかったこともあり、父は私に多くを教えてくれなかった。
「ほの花は何も気にせずにのびのび生きるんだ」とよく言われていたから甘やかされ過ぎて忘れているのだと思っていた。
それでも口酸っぱくして言われ続けたことは、いま宇髄さんが私に言ってくれることと全く同じ言葉。
「あの能力を人前で絶対に使うな」と言うこと。
これだけは今いる中で知っているのは宇髄さんとしのぶさんだけ。
里でも家族のみで正宗達は知らない。
あんなに甘やかされて育ったのにそれだけは毎日と言って良いほど言われた気がする。
だから此処に来て、宇髄さんがまるでそれを引き継ぐかのように言ってくれた時は正直驚いた。
宇髄さんはただ私のことを心配してくれているのだと思うが、いま思えばうちの家族がそう言い続けたのは何か意図があったのではないかと思わざるを得ない。
それほど私の記憶は曖昧だ。
「…本当のところは分からないけど、きっと私の知らないところでも…家族に守られて生きてきたんだと思う。」
「…そうだな。良いじゃねぇか。大切にされてきた証拠だ。お前は胸を張って生きりゃァいい。」
どんな私だってそうやって受け入れてくれる宇髄さんがいなければ今頃どうなっていただろう。
ひょっとしたら生きていなかったかもしれないとすら考える時がある。
家族に守られて生きてきて、それを引き継ぐかのように宇髄さんに守られて生きている今。
私の中で家族よりも大切な人だと思える宇髄さん。恥ずかしげもなく言うのであれば、あの時生き残ったのは鬼を倒すためだけでなくて、宇髄さんに出会うためだったと…本気で思っている。