第3章 立ち振る舞いにご注意を
誕生日だっつーのになかなかの気分の落ち込みにどうしたもんかと座り込んだが、この家では静かに過ごせることは少ない。
どこかでドタバタドタバタと嫁達が騒いでいるからだ。いつものことだが、今日はデカい声で叫んでいる。
1人でゆっくり考える時間もねぇが、今日は随分と感傷的になっていたようで声のする方に向かって歩き出す。
「どこですかーー?!」
「須磨!いた?」
「いないんですーー!雛鶴さんも見てないって!」
慌てたように廊下を走り回っているので、仕方なく声をかける。騒がしいのはいつものことだが、ひどく憔悴しているのは一体何故だ。
「どうした?何かあったのか。」
「あ、て、天元様!!あの、ほの花さん見なかったですか?」
あー、そういうことね。
俺のとこには置き手紙をしたが、こいつらには伝えてなかったのか。
いくら探しても家の中にアイツはいねぇからそりゃ驚くわな。
「ほの花はいねぇよ。今日は帰らねぇんだと。」
「………え、は、はい?!な、何でですか?!というか何で知ってるんですか?!」
まきをが俺の胸ぐらを掴むとガクガクと思い切り振り回す。
「ぐえ、や、やめろって!俺んとこに置き手紙があったんだ、って離せって!殺す気か!」
「な、何で…、だって…準備だって一緒にしたのに…。」
「は?途中まではいたのか?」
まきをの言い方から察するにほの花は自分の誕生日の準備をしてくれていたようだ。
恐らくその後、お館様のところに行くと言っていたので夕刻になっても帰ってこないほの花に気づいてこの有様か。
「ほの花さん、天元様に出し巻き卵と肉じゃがつくってくれてたんですよー!!飾り付けとかも一緒にやったのにー…。」
帰ってこないことを知らされた須磨が泣きそうな顔で俯くのでどうやら一緒にいたいのは俺だけではなく、嫁達も同じ気持ちだということだ。
庭を捜索していた雛鶴が帰ってきたので同じように伝えるとまぁ、この空間だけ葬式だ。
ほの花め、随分な置き土産をしてくれたモンだな。帰ってきたらちょっとお仕置きでもしてやらねェとな。