第3章 立ち振る舞いにご注意を
【宇髄さんへ
お誕生日おめでとうございます。
いつも私たちがお邪魔虫になっていたかと思いますので、今日は奥様達と夫婦水入らずで素敵な時間をお過ごしください。
私たちは今日だけ外泊してきますので、お気になさらぬよう…。 ほの花】
何だこりゃぁ。
仕事から帰ってきたら部屋にこんなら置き手紙だけが置いてあり、忽然と姿を消した継子のほの花。
確かに今日は誕生日だ。
毎年、この日はアイツらが祝ってくれるのは知っていたし、今年はほの花もいると思うと少しばかりニヤけてしまったというのに、この手紙で完全にしらけた。
普通の夫婦ならばこの手の贈り物を喜ぶことだろうが、アイツらは里を抜けるために同じ考えだった為に連れ立ってきた三人で、夫婦ということにした方が抜けやすかったからだ。
そういう事情だから俺の行動を細かく制限したりすることはないし、もしアイツらに想い人ができたならばこの関係を解消するのは全く構わない。
継子として可愛がっているほの花は正直目の保養と感じるほど綺麗な顔をしているし、そんな女が自分の誕生日を祝ってくれる状況など誰しもが楽しみにするってモンだ。
確かにほの花は「奥様に誤解されないように振る舞います」と言ったが、その時は相談も無しに勝手に継子を連れて行くわけだから少なからず同居人への配慮としてそれで良いかと思っていた。
だが、アイツらは俺の予想に反してほの花を連れてきたことを物凄く喜び、妹のように可愛がっている。それはもう異常なほどの可愛がりようだ。
何なら俺とほの花が恋仲になればいいとすら思っている。
流石にお館様から頼まれた継子に手を出すなんてまずいと思い、急速に惹かれていた気持ちに蓋をしたが、共に生活することが楽しいことに変わりはない。
「…だからってお前に祝って欲しいなんて、言えねェよなぁー。何で?ってなるもんなぁー。」
俺の心の声は独り言となり、部屋に消えていった。