第21章 桜舞う、君との約束※
「でもでも!ほの花さんのご両親はよーっぽど女の子が欲しかったんですね!!」
須磨の言葉に思わずほの花は笑っていたが、あまりに突拍子もなくて持っていた箸を落としそうになった。
「えー?あ、上に四人も兄がいるのに私が生まれたからですか?そう、なんですかねぇ…。聞いたこともないですし、陰陽師としては男の子の方がよかったんじゃないかなぁ…。」
「あ、いえ。それは須磨さんの言う通りかと…。」
ほの花すら知らないことだと言うのに突然大進が口を挟んだので全員が注目する。
須磨の隣で微笑んだままの大進は表情を変えることなく顎に手を当てて思い出すように言葉を紡ぐ。
「…確か…うちの父が言ってたことがあるんですけど、神楽家で女児が生まれるのは100年ぶりのことらしいですよ。」
「「「100年ぶり?!」」」
「へぇ〜、そうなんだぁ。知らなかったや。」
呑気な反応のほの花以外は確率論からしてその年数に驚きしかない。
世の理的に男女比というのはちょうど半々というのが多いというのに女が生まれるのが100年ぶりだなんて不思議としか言いようがない。
しかし、大進も含め、ほの花の元護衛達は代々神楽家に仕えてきた側近の家系だと言っていたし、そこに嘘などないだろう。
もしそれが本当ならばよほど女が欲しかったのか…?四人も子供がいてまだ産もうって言うのだから。
いや、ただ愛し合った末に出来ただけのような気もするし、此処で話したところで机上の空論だ。本当のことは分かりやしない。
「まぁ…それだけ久しぶりに女が生まれたっつーならほの花に過保護になる兄君達の気持ちも分からんでもないけどな。」
「あはは!そうかもねっ!全然知らなかったけど。でもね、あんまり昔の記憶ないの。途切れ途切れしか。そんな大層なことも何で知らないんだろうなぁ。」
小首を傾げるほの花の感じた違和感は確かに俺も感じていた。100年だ。100年も生まれなかった女がやっと生まれたと言うのにその事実を当の本人が知らないなんてことはあるのか?
会話の中に出てきそうなものを。
しかし、どれもこれもやはり机上の空論。ちゃんと知るためには情報が少な過ぎて、それ以上考えることすらできなかった。