第21章 桜舞う、君との約束※
ほの花は決して嫌がることなく、自分の過去を元嫁達に話してくれた。
俺も知らないこともあったりして興味深かったし、もっと彼女と近づけた気がして嬉しくもある。
いつも歌っていた歌がまさか薬の歌だったなんて思いもしなかったが、お義母さんはほの花に自由に生きてほしいと思う反面、彼女に自分の全てを託したのだろう。
万が一、自分がいなくなった後も受け継がれていくことを想定していたかどうかは分からないが、ほの花が言うように陰陽師として兄達には敵わないと事前にわかっていたならばその可能性も否定はできない。
ほの花は確かに鬼殺隊として十分に戦えるのは間違いないが、上弦の鬼との戦いになれば心許ないとは感じていたこともあったので、彼女の話に納得せざるを得ない。
陰陽師としての能力が男女比があったなんて知りもしなかった。
それを知っていながらも鍛錬を欠かさずにやっているほの花の努力家のところは舌を巻くし、自分の継子にして良かったと思える。
「確かに母は兄達に薬のことを教えていたことは見たことなくて、私ばかり子どもの頃からままごとの代わりのように薬の調合をやらせてもらってました。」
「…ままごとで薬の調合ってすげぇ特殊だけどな…。」
「そうだねぇ…。今考えれば、そう感じるけどその時は楽しくて母の仕事ばかり見てたんだぁ。もちろんお兄様達と一緒にできる修行も楽しかったけど。」
お義母さんの薬の件は直接関係するかは分からないが、神楽家はいずれお館様と合流する予定だったのかも知れない。
お館様のところに頻繁に薬を届けていたと言うのもそのための布石と考えれば納得がいく。
そうでなければ神楽家が全員日輪刀を持っていたと言うことの説明は付かないし、女であっても戦えるようにと修行をさせる必要はない。
ほの花の両親は兄達より劣ったとしてもせめて自分の身を自分で守れるようにと育ててきたような気がしてならなかった。
もし、そうならば…
(…自分の身どころか人を守れるほどの強い女になってますよ。)
見ているかどうかはわからないが、俺は天を見上げると猪口に入っていた酒を飲み干した。