第21章 桜舞う、君との約束※
私は大きく息を吐くとまきをさんに笑顔を向けた。そんな申し訳なさそうな顔をしないでほしい。私たちが失念していただけで、聞いてくれたまきをさんは全く悪くない。
「私は陰陽師の家系なんです。少し前まではうちの神楽家以外にも里には他の陰陽師の家があったんですが、今はうちだけになりました。
そして…、私が日本における陰陽師の最後の生き残りになります。」
「…お、陰陽師…、聞いたことあります…!え、では隆元様達も…?」
「あ、いえ、我々は神楽家に代々仕えている側近の家系で陰陽師ではないんです。昔から陰陽師の家系には側近が付き物で里に住んでいる人たちは何らかの陰陽師の家に仕えた人々ですが、実際には既にあの里にいた陰陽師はほの花様達の神楽家のみでした。」
そう、陰陽師は本当はもっとたくさんいた。
神楽家は奇跡的に世継ぎに恵まれて世襲をしていけたが、多くは世継ぎに恵まれなかった。
私が生まれた時にはあの里にいた陰陽師はうちだけになっていたのだ。
「…陰陽師の血筋は男女でその度合いが違います。序列を付ければ男性のが遥かに陰陽師としては優秀と言われています。兄が四人もいて正直世継ぎはいたので、私の陰陽師としての能力はお世辞にも秀でているとは言えません。」
「え、い、いえ、そんな…!」
「あ、謙遜じゃなくてこれは事実なので気にしないでください!あははっ!」
そう、陰陽師として私も一通り修行はしたけど、それはいざという時に身を守るため。
せっかく陰陽師の家に生まれたのだから…という"ついで感"で学んだに過ぎない。元々、私が神楽家を継ぐなんてことは考えられてもいなかったのだから。
「…でも、だから、里に帰って自分の家族が全滅していた時、最初は"私が生き残っても何の意味もないのに…"と途方に暮れました。だって私に流れる陰陽師の血は兄達に比べたら薄いし、事実上、日本の陰陽師は絶滅したと言っていいのだから。」
私が代わりに死ぬから兄達の誰かが生き残ってくれたら…と何度願ったか。
あの時は本当に良からぬ考えが頭を埋め尽くしてまともな考えなんて浮かばなかった。
生きてることがつらかった。