第21章 桜舞う、君との約束※
「あ、あはは…。」と乾いた笑いしか出ない。
正宗達が言っていたことは事実で両親よりも兄達に文字通り"溺愛"されていたと思う。
「はわー…、でも、それなら天元様の異常なほどの執着っぷりは慣れっこって事ですね!よかったですね、天元様ー!」
「は?おい、須磨。お前、悪口か?良い度胸だ…。」
「え?!いや、えっと、だって事実…っていや、えっと、」
しどろもどろになる須磨さんを追い詰めるように見下ろす宇髄さんを「まぁまぁ…」と窘めるが、宇髄さんとお兄様達とはまるで方向性が全然違う。
勿論どちらも私を愛してくれていると言うのは相違ないと思うが、お兄様達には奥様達もいたし、やはり私はいつかは想いを寄せる人と恋仲になりたいと思っていたのだから宇髄さんの存在は特別なものだ。
「あははっ…!宇髄さんと兄達ではまた違うと思いますけど、私、兄妹の中で唯一の女だったのでとても可愛がってくれたんですよ。ちょっと熱烈でしたけど…。」
すると黙って聞いていたまきをさんが少しだけ言いにくそうに会話に入ってきた。
「ずっと気になっていたんですけど…聞いても良いですか?」
「え?はい。どうぞ。」
「ほの花さん達は人里離れた山奥で暮らしていたんですよね?それは何でですか?」
「え…?」
その質問に私はキョトンとしてしまった。
言いたくないわけではない。ただ単純にまだ彼女達に言っていなかったという事実に驚いたからだ。
私よりも接触が多い正宗達は彼女達にすら秘密を守るために一言も言わなかったのだろう。
その忠誠心は見事なものだが、共に暮らすものとして"話してくれない何か"を少なからず感じていたのだろう。
まきをさんの申し訳なさそうな態度が一目瞭然だ。
「まきを…、」
「宇髄さん!良いんです!違うんです。」
間髪入れずに言葉を紡ぐことができなかった私に宇髄さんは言いたくないのだろうと感じたようですぐに間に入ろうとしてくれたが、それを制した。
違う。話したくないわけじゃない。
話す機会がなかったんだ。
「…話すのをうっかり忘れてただけなんです。私も、正宗達も此処にいる全員を信頼してますので大丈夫です。」
私は正宗達と目を合わせて頷き合った。
想いは一緒。
此処に少しの澱みもない。
私たちは彼らを信じてるから。