第21章 桜舞う、君との約束※
持ってきた猪口を三人に渡すと酒を注ぐ。
「宇髄様、やりますよ。」
「いや、いい。今日はやらせてくれ。」
別に使用人を雇っているわけでもないのに遠慮深さはほの花に似ている。あの里の住人はどれほど控えめな性格の集まりなのだ。
三人に均等に酒を注ぐとほの花が俺の隣に座って酒の瓶を取り上げた。優しく笑うその姿に酌をしてくれるのだと分かるので猪口を持ち、彼女に向けた。
さりげない気遣いも然り、この四人は同じところで育ったのだから当たり前かもしれないがすごく似ている。
「ほの花は?」
「ううん。私は大丈夫。全員潰れたら駄目だし、お酒あんまり得意じゃないから。」
そういやほの花が酒をかっ喰らっているところは見たことがない。女でも飲めば良いとは思うが、ただ単純に苦手だと言うなら無理強いはできない。
「宇髄様、こう言ってはなんですが…ほの花様は酒癖悪いので絶対やめた方がいいです。」
「我々、胸ぐらを掴まれて凄まれた上に…」
「酒の瓶を口に突っ込まれました…。」
「ちょ、ちょっと!そんなことバラさなくてもいいでしょーーー!?」
恥ずかしそうに俯くほの花だが、それを聞くと飲ませてみたくなるというものだ。
こんな外で酒乱を晒け出されては困るので今度家で飲ませてみるか…と決意したところで猪口を掲げる。
「まぁ、ほの花の酒乱はゆくゆく見せてもらうとして、墓参り来てくれてありがとな。今日はたらふく食って飲め!」
俺がクイっと酒を飲むと皆一様に手に持っていた飲み物を飲む。
未だに恥ずかしそうに俯くほの花は隣でお茶をちびちびと飲んでいる。
そんなほの花の肩に手を置き、引き寄せると揶揄うように笑う。
「何だよ、お前。酒癖悪ぃのか?」
「…一回しか飲んだことないの…!でも、里では
十八になった時に成人と見做されて家長にお酒を飲まされる儀式みたいなのがあって…!」
「その一回で酒乱が分かったのか?逆に才能だぜ、それ。」
つい最近では酒は二十歳になってからしか飲めないという御布令が出ているようだが、まだ場所によってはほの花のように飲んでいる奴もいる。
そもそもほの花はもう二十歳なのだからいつかは月見酒でも二人でしたいものだ。