第21章 桜舞う、君との約束※
「…天元様が此処であんなに笑ってらっしゃるの初めて見ました。」
横にいた雛鶴さんがそう呟くと、ふわりと表情を崩して微笑んだ。それを見たまきをさんと須磨さんも顔を見合わせてコクンと頷いている。
詳しいことは知らないが、連れてきて下さったのはとてもありがたいし、自分達も家族のように扱ってくれる宇髄様は同じ男としても格好良い男性だと思う。ほの花様は実は物凄く男運が良いのではないか。
里には自分に見合う男性がいなかっただけ。それだけのことだ。
妹みたいに可愛がるほの花様が幸せになってもらう欲しいと思うのは20年間仕えてきて思い続けてきたことだし、その相手が宇髄様なのであればありがたいと言う言葉以外見つからない。
いつもは明るくて男気溢れた豪快な彼にもきっと悲しい過去があったのだろう。此処にきてからの宇髄様は口数が少なく、物悲しい顔をしていたのは先ほどまで。
目の前で笑い転げる彼はいつもの彼で。
横には顔を真っ赤に染めて恥ずかしがっているほの花様の姿。
確かに笑い転げるほどのことをやってのけたほの花様に元護衛としても若干目を逸らしたくなることだが…。
しかし、いつもの彼だと思っていたのに、此処であんなに笑っているのを見たことがなかったという雛鶴さんの言葉に驚きを隠せない。
「…宇髄様もつらい過去がお有りなんですね。良いか悪いか分かりませんが、ほの花様のボケっぷりが役に立ったのなら本望でしょう…。」
苦笑いをしながらも墓石の前で対称的な反応を繰り広げる二人を見つめた。
「…ほの花さんのおかげですね。やっぱり天元様の良い人がほの花さんで良かったです!」
「……そうですね。私もそう思います。ほの花様の恋人が宇髄様で良かったと。」
昨今、見合い結婚もまだまだ多い中、お互いを必要とし合える関係性は夫婦間であっても必ずしも持てるものではない。そんな中でもあの二人がお互いを必要不可欠とした関係性になれているのならばこんな嬉しいことはない。