第21章 桜舞う、君との約束※
墓の掃除をしながらもやはり考え事をしてしまう。
今生きていればいくつだったか?やら
結婚でもして幸せな人生を送っていたか。やら。
考え始めると止まらない。
いつもは前向きに考えられるところだが、此処に来るとこんな感じになるのは珍しくない。
気を遣ってくれているのかほの花も一言も話さずに隣にいてくれている…と思ったのだが、突然、墓周りの雑草を抜いてくれていたほの花がボソボソと話し出した。
しかも、声に出して話していると気付いていない様子で思わず二度見した。
そしてまぁまぁの声の大きさだったため、後ろにいた六人とも目を合わせてしまった。
(…コイツ、馬鹿?)
でも、その瞬間笑いが込み上げてきて、隣で尚も弟達に心の中で挨拶をしている(つもりの)ほの花を見つめ続けた。
(…でも、可愛い奴。)
声を出していないつもりなのかもしれないが、出ているわ、一人で百面相してるわ、でハタからみたらめちゃくちゃ怪しい女だ。
しかし、口に出して言うのは恥ずかしいと思ったほの花らしい考えだと思う。
口に出しちまってるけど。
段々とあまりに必死に挨拶しているほの花が可愛いけど、面白くなってきて、ニヤける口元を手で覆った。
気付かないふりをしてやるのが優しさなのかもしれないが、言い終わったほの花があまりに達成感いっぱいの顔をしていたので思わず吹き出してしまった。
「…え?ど、どしたの?」
「…お、おま、…、こ、声に、全部出てたぞ…?」
「え?!う、うそ!!」
「ちょ、お前、馬鹿なの?ハハッ、ハハハハッ!!」
なぁ、ほの花。
お前と出会えて本当に良かった。
過去を省みることはあってもこんな風に此処で笑えるなんて思ってもみなかった。
家族に愛されて育った底抜けに優しいお前が光を照らしてくれる。
生きていたからこそほの花に会えた。
生きていたからこそほの花を愛することができた。
生きていたからこそこれからの人生、ほの花と共に歩みたいと思えたのだ。
恥ずかしそうにしゃがみ込むほの花の頭を撫でると墓に向き合う。
(…俺の女、クソ可愛いだろ。お前らの義姉になるから楽しみにしとけよ。)