第21章 桜舞う、君との約束※
お墓の前に御馳走を広げるとまるでお花見のような状況。
いつもこうなのだろうか?
雛鶴さん達は当たり前のように準備をしているのできっとそうなのだろう。
お墓を一つ一つ掃除をするのを手伝いながら考えるのは宇髄さんのこと。
先ほどからあまり話さない彼。
いつもは話題豊富で話しかけてくれると言うのに今は物静かに墓石の汚れを拭き取っている。
私も隣に寄り添って墓石の周りに生えた雑草を抜いていく。
(…何か話した方がいいのかな。)
私たちの間に会話はなく、後ろから六人の笑い声が聴こえて来るのに此処は別世界のよう。
自分が手にかけた弟さん達もいると聞いているので笑えるような心情でもないのは当たり前だ。
そう言う時は無理して笑うことはない。
楽しい時は楽しい音楽を。
悲しい時は悲しい音楽を。
母が昔よく言っていた。
悲しい気分の時に楽しい音楽を聴くのは逆効果だって。
心が欲していないことをするのは精神的苦痛になるだけ。
今の宇髄さんにとって会話は必要ない。
ただ彼のそばにいるだけでいい。
(…心の中から失礼します!はじめまして、神楽ほの花です。よろしくお願いします。職業は薬師です。鬼殺隊もしています。宇髄さんはお師匠様兼恋人ということになっております…!いつも優しくて甘えさせてくれる宇髄さんが大好きです。きっと皆様にとっても素敵なお兄様だったんでしょうね…。でも、私はすぐに心配かけてしまって申し訳ない限りです…。少しでもお兄様が安心できるようになるべく心配かけないように頑張りますのでどうぞ見守っていてください…!心の中での挨拶になってしまってすみませんでした…!)
前に宇髄さんが私の家族の墓前でしてくれたみたいに心の中で挨拶を済ませると、隣にいた宇髄さんが「…ぷっ…」と吹き出した。
「…え?ど、どしたの?」
「…お、おま、…、こ、声に、全部出てたぞ…?」
「え?!う、うそ!!」
「ちょ、お前、馬鹿なの?ハハッ、ハハハハッ!!」
あまりに爆笑する宇髄さんに恥ずかしくなって後ろを振り向くとこちらを見ないようにしている六人の姿が目に入る。
……最悪。
全員に聞かれてたんだ…。
あまりに恥ずかしすぎて、その場で顔を隠してしゃがみ込んだ。
(……恥ずか死ぬ…!!!)