第21章 桜舞う、君との約束※
宇髄さんは11時ごろ私を部屋まで迎えに来ると手を繋いでくれて玄関に向かう。
そこには準備万端な六人が勢揃いしていて、私か宇髄さんがいなくて、朝ごはんくらいしか全員で集まる機会もなかったのでとても新鮮だ。
「なんか…大家族みたい…。」
「みたいじゃなくて、"大家族"だろ?」
さも当たり前かのように言われる言葉は家族を亡くした私たちからすると沁み入る。
ふと正宗達を見ると嬉しそうに微笑んでいてそれを見るだけで私も嬉しい。
本当の家族は亡くなったけど、私にとって正宗達も家族同然で育ったわけで血の繋がりのないお兄ちゃんのような存在なのは間違いないわけで。
恋仲である宇髄さんがそんな彼らまで自分の家族だと言ってくれたことに彼の懐の深さを感じて幸せな気持ちになる。
手を引かれて向かう先は意外にも山の中。
しかし、自分達の町ではすっかり散ってしまっていた桜が山の中ではまだ咲き誇っていて目を奪われる。
「わぁっ!此処はまだ桜が咲いてるんだ!綺麗だねぇっ!」
「山のが寒ぃからな。ちょっと遅ぇんだろ?」
「嬉しい!私、桜大好きなのっ!寝込んでたらいつの間にか散ってて悲しかったんだぁ…。」
そう、三日間寝太郎で起きても暫くは宇髄さんに外出禁止令を出されて家の中にいたのでその間に桜は散ってしまっていた。
「お前が無理するから悪ぃんだろ。来年はちゃんと桜見れるように大人しくしておけよ。」
「…はぁーい。」
宇髄さんに手を引かれて歩くこと1時間程度。
自分の里ほど険しい山道ではないが、ゆったりとした傾斜を登ってきたので薄っすら汗ばんでくる。
「もう少しだ」と言われて登り切った先にあった開けた場所には桜が満開。
はらはらと舞う花びらが美しくて息を呑む。
しかし、見上げていた視線を下に向けると、桜が咲き乱れるそこにあったのは墓石。
桜はとても綺麗だ。
咲けば多くの者を魅了する。
それと同時に風が吹けば散りゆく様はとても儚い。
降り注ぐ桜吹雪はまるで人生そのもの。
人はいつか必ず死ぬ。
満開になるその時も、散りゆくその時も、いつかは誰もが分からない。
でも、終わりがあるからこそ人も花も美しいと感じるのだ。
終わりのない、終わらせることができない鬼はやはり稀有な存在。