第20章 未来花嫁修行※
隊服を脱ぎ捨てて、夜着に着替えるといつも通りほの花の布団に入り込む。
いつも彼女の温もりを感じると秒で眠くなってしまうと言うのに今日はまだ目覚めないほの花の顔を見つめている。
あれから三日経っている。
今日起きなければ胡蝶に連絡しないといけない。
まさか本当に三日も目覚めないだなんて思わなかった。
目の前には綺麗な顔をしたまま眠るほの花の姿。こんな時なのに美しいと感じるが、できたら目を開けて笑って欲しい。
情交後であればこうやってほの花の寝顔を見るのが楽しみで早起きをしてしまっていたが、今はただ早く彼女の笑顔が見たい。
早く話したい。
声が聞きたい。
「…早く起きろよ、ほの花。愛してる。これからもずっと愛してるから…早く起きろって…。」
懇願するように呟くと、吸い込まれるように彼女の唇に口付けた。
何度も
何度も
何度も
最後の口づけをするとほの花の顔をぼーっと眺めていた。
すると、突然ピクンと瞼が動いたので、俺は目を見開きその様子を凝視した。
瞼が動くと今度は「うーん…」と可愛い声が聞こえてくる。ホッとして正直なところ目頭が熱くなったが、悟られまいと必死に眉間に皺を寄せた。
漸く長い長い眠りから目覚めた愛おしい恋人。
その大きな瞳が開かれるとそこには怖い顔をした自分が映っているが、少しくらい許して欲しい。
それだけ心配だったのだ。
この時は泣きそうになった自分を隠すために怒ったフリをしていたのに、第一声が随分と間の抜けた声で「あ、おはよー」だったことで、俺の怒りは一気に頂点に達した。
しかし、いくらほの花を怒鳴ったところで彼女とて眠りこけたくてそうなったわけではない。それが分かっているだけに怒ろうにも怒りは肩透かしを喰らうので感情を制御できない。
しこたま寝たことで随分とスッキリとしたというほの花を見て安心すると途端に眠気が襲ってきた。しかし、とてもほの花を手放す気になれず起きたばかりの彼女の体を離せずにそのまま眠りについてしまった。
それなのに目が覚めたのは彼女と一緒で視線が絡み合うと、引き寄せられるように口づけをした。