第20章 未来花嫁修行※
ほの花のことであれば胡蝶よりもよく分かっていたつもりだったので診察結果に納得できずに食ってかかってしまった。
「…おい、言っちゃァなんだが、コイツこんなに寝てたことねぇんだけど…。」
「そうは言われても肺の音も問題ないですし、発熱自体もそこまで酷くないです。そのうち下がるでしょう。脈も正常。悪いところは殆どないので、寝不足が続いていたと言うならそれが原因としか思えません。」
「…ちゃんと意識戻るんだろうな?」
「そんなことは私に言われても分かりませんよ。でも、ただ寝てるだけなのは間違いないのでそのうち起きると思います。三日経っても起きないようならまた連絡下さい。点滴しないと栄養が摂れませんので。」
胡蝶から"三日経っても起きないようなら…"という言葉を聞いて俺は背筋が凍った。
そんなことないだろ…?もう少ししたら起きるはずだ。
先ほどまで診察内容に苦言を呈していたと言うのに、"三日経っても…"と言う言葉に怖くなった。
このまま、ほの花の目が覚めなければ…?柄にもなくそんなことを考え始めてしまったのは翌日の朝から。
熱は確かに胡蝶の言う通り下がっていたが、やはり身体を動かしても起きる気配はない。
起きるまでずっとそばにいたいという想いだと言うのにこんな日でも任務はある。
一分一秒でもほの花といたいと思って、気もそぞろだ。
万が一、自分がいない時に…万が一のことがあったら…?
疲労で死ぬやつもいると言うのは知っていたが、いざ自分の女がそうなったらと考えると怖くてたまらなかった。
鬼殺隊に入った以上、ほの花だって、俺だって命をかけて戦っている。
しかし、流石の俺も"今なのか"と頭を抱えた。
結局、いつほの花が起きるか分からないので隣にいても寝た気がしない中、任務に行く羽目になった。
幸い、上弦の鬼との戦いではなかったので、怪我もなく二日後には帰ってこれたが、ほの花の部屋に入ると二日前と何にも変わっていないスヤスヤと寝息を立てるほの花の姿があった。