第20章 未来花嫁修行※
頭の上から降ってきた声はいつもの宇髄さん…ではなくて、あまりに消え入りそうで居た堪れなくなった。
「…ほんっとに心配したんだからな。」
「あ、……と。ごめん、なさい…。」
「全然起きねぇしよ…。昨日まで熱もあったから流石に胡蝶に来てもらって診てもらったけど、ただの過労で寝てるだけって言われて…。」
もし、自分だったらと考えると確かに心配で死にそうだと思う。
そんな思いを恋人にさせたかと思うと申し訳なくて仕方がない。
「…このまま目が覚めなかったら…って柄にもねぇこと考えちまった。お前のせいだぞ。」
「う…、ほんと、ごめんね。」
「もうこの先一生離してやんねぇから。そんでもってお前は一生俺のそばにいろ。いいな。」
ほんの少し体が震えているように感じたのは気のせいだろうか。
自分はしこたま寝ただけの感覚だが、宇髄さんからすれば三日間も心配で仕方なかったことだろう。
いつもは私が安心させてもらうばかり。
たまには私が彼を安心させたいと思い、おずおずと背中に回した手でゆっくりと撫でてみた。
「…うん。いるよ。心配かけてごめんね。」
「………体調は?」
「すっごい寝たからめちゃくちゃ頭スッキリしてる。」
「でしょーねー。その代わり俺は死ぬほど眠ぃーわ。俺は寝るから起きるまでお前隣にいろよ。」
宇髄さんは私を抱きしめたまま体を横にするとものの数分で寝息が聞こえてきた。
よっぽど心配かけてしまったのだろう。見上げる先の彼は薄っすらクマが出来ていて、いつぞやの自分のよう。
(…クマ、出来てるとやっぱ心配になるなぁ…)
自分は随分と前から彼に心配をかけていた事実に気づくともう眠くもないのに擦り寄って目を閉じてみる。
しこたま寝てしまったせいでこうしたところで眠ることなんて出来やしないと思っていたのに、彼の寝息と温もりで数分後には私も再び眠ってしまっていた。
起きたのは彼とほぼ同時。
その日の夕方だった。
顔を見合わせた私たちはどちらかともなく口づけをした。