第20章 未来花嫁修行※
大きくて温かい胸に抱きしめられるとそれだけで安心してちょっと眠くなってきてしまう。
でも、話し始めたのは自分なのだから…と、必死に瞼を持ち上げた。
「…ごめん。もうアイツらには頼まねぇから。お前もお館様に相談する前に俺に言えよ。」
もっと怒られるかと思ったけど、思ったよりもすぐに宇髄さんは謝ってくれて私の話を理解してくれた。
ただ産屋敷様すら男と認識している宇髄さんにはもう苦笑いしかない。
それだけ愛されていると思えば嬉しい限りなのだが。
「お弁当も…無理に作ったりしないから。雛鶴さんに頼むとか言わないでね…。」
「…言っとくけど、お前のメシが食いたくねぇとかそういうんじゃねぇからな。」
「…わかってるよー。」
「そりゃほの花の飯食えるなんて最高だとは思うけどよ。そんなことするくらいなら俺のそばで寛いで休んで欲しかっただけだからな。」
ちゃんと自分の心に余裕があれば、宇髄さんの言葉も驚くほど脳に響く。どれほど自分が疲れてて、まともな判断ができていなかったかが露呈すると少しだけ恥ずかしい。
もっと怒っても良いのに宇髄さんの声色は優しい。
「…体壊したら意味ねぇからな。いつも元気に笑って俺の隣にいろよ。」
ああ、産屋敷様の言う通りですね。
宇髄さんはちゃんと私のこと分かってくれてました。
「全部終わったら…毎日ほの花の飯食って、たまにはお前の膝枕で昼寝して、朝っぱらから三発くらいぶち込みてぇ。」
……最後恐ろしい願望が聴こえた気がしたが、眠いから聴こえないフリをしよう。だけど、宇髄さんはちゃんと私のことを考えてくれている。
無理して婚約者として役に立とうとしなくても私のことを認めてくれて愛してくれている。
「お前のこと愛してるから俺の前で無理だけはすんな。頼むから。」
微睡む意識の中で何回も「愛してる」って言われた気がする。
それにちゃんと答えられていたかは分からないけど、落ちていく先は幸せな夢の中。
宇髄さんの温もりが優しく包んでくれていた。