第20章 未来花嫁修行※
ほの花の体を受け止めて、俺も背中に手を回して抱き締めると、華奢な体が自分の体がぴたりとくっつく。
厭らしい気分になりそうなところを必死に抑えているとほの花が俺を見上げて微笑むものだから思わず口付けた。
「…んっ、…。」
「あんま煽んなよ。体調不良のお前を抱くような鬼畜には成り下がりたくない。」
「…宇髄さんは鬼畜なんかじゃないよ。あのね、産屋敷様がね、教えてくれたの。宇髄さんは何かして欲しいよりそばにいて隣で笑っていて欲しいと思うよって。」
ほの花の話を聞いていると、どうやらお館様が彼女を諭してくれたようで漸く腑に落ちた。きっと心の蟠りをお館様に話したことでピンと張り詰めていた糸が切れたのだろう。
話していなかったらひょっとしたらまだ無理をし続けていたかも知れないと考えるとゾッとするので、お館様には感謝しかない。
「…帰ってきたら思いっきり甘えるといいって言われたんだけど、…甘え方がよく分かんなくて。…抱きついてみたけど正解?」
「んー、半分正解で半分不正解。」
「えー、そうなの?」
お館様のおかげでほの花が自分の無茶を気付けたのは有り難いが、お館様といえど他の男に相談されるのは少し面白くない。
「お館様に言う前に俺にそれを言えば良かったろ。他の男に相談されるのは面白くねぇ。」
「…宇髄さんだって私に無理させたくないからってまきをさんに着物の修繕頼んだじゃん…。私、アレ嫌だった。」
「はぁ?だ、だからお前クソ忙しかったじゃねぇか、…」
「でも、悔しかったからまきをさんに上手いこと言って私が昨日やったけどね。最初から頼んでくれてたら無理せず少しずつやったのに。」
そう言われて顔を引き攣らせた。
今着ている夜着からほの花の匂いがした意味を突然理解するとため息を吐いて項垂れた。
しかし、ほの花に無茶させた原因のひとつが自分なのだと分かれば素直に謝るしかない。