第3章 立ち振る舞いにご注意を
「あのなァ、そんなモンお前に祝って欲しいに決まってンだろ?」
「だからお祝いしてますーー!夫婦の時間を贈ったんです!」
「ちげぇって。直接お前に祝ってほしいだろ、普通。」
"普通"?
"普通"って何?
"普通"は夫婦水入らずで過ごす時間って嬉しくないのかな?私なら嬉しいんだけど…。
「え、ひょっとしてそう言うのより物の方がいいってことですか?あ!不死川さん、宇髄さんの欲しいもの知ってるんですね?!そういうことなら早く言ってくださいよーー!」
「はァーーー?!何故そうなる!!宇髄はテメェと過ごしてェんじゃねぇのってことだわ!」
思わず二人で大声で討論してしまったが、不死川さんの発言に首を傾げるしかない。
何故私と過ごすのだ。それならば日常と変わらない。毎日修行と称して鍛えてくれているし、奥様達より長い時間を過ごしている私と誕生日にまで一緒にいたい理由がわからない。
「…何でですかぁ?意味がわからないです〜。でも、もう置き手紙までして出てきちゃったので今更帰れないですし、絶対喜ぶと思うんですけど…。」
「置き手紙って…家出娘かよ。あァー、それでさっきの三人は宿屋を探すとか言ってたのかよ。」
「そうなんです…。」
ここまで男性側の意見が一致しているとこっちが男心が分かってないのかと思わせられてきた。
乙女心は分かってるつもりだが、男心は分かっていなかったのだろうか。
「……もし良けりゃァ、空いてる部屋は腐るほどあるからあの三人もまとめて泊まっていっても構わねェが。」
「え?!い、いいんですか?」
突然の有難い申し出に秒で食いついてしまったがよく考えたら宇髄さんの継子が別の柱の世話になるなんて良くないだろう。
「あ、いや、やっぱり…。うんーー…。」
「落ち着けやァ。とりあえずもう一個おはぎ食っとけや。」
「いただきます…。」
そう言って差し出されたおはぎをもう一つ掴むと考えをまとめようとそれにかぶりつく。
美味しいはずのそれはもう味も分からず、口の中で咀嚼して飲み込むだけのその一連の流れをひたすら続けた。