第20章 未来花嫁修行※
「ごめ、なさ….。ちょっと急に、眩暈が…して、体動かすと余計に酷くなりそうだった…。もう大丈夫。」
数分後、漸くぽつりと話し出したほの花の言葉を聞いてため息を吐くと、そのまま抱き上げる。
「お前な、絶対過労だぞ、それ。だから言ったろ。」
大丈夫と言っているがどう見ても大丈夫そうじゃない。真っ青な顔色でクマは任務に行く前よりも酷くなっているし、体は抱き上げていてもフラフラするのか腕に掴まりながら俺の胸に顔を寄せている。
「…うん、ごめんね。ちょっと…疲れちゃったみたい…。」
履物を脱ぐと縁側でほの花の足の裏についた土を払ってやり部屋の中に入る。
しかし、そこに布団は敷いておらず、彼女の寝ていた形跡はない。
「お前、まさか徹夜した?」
「あ、いや、今帰ってきたところなの。しのぶさんのところに怪我人の人の手当てに行ってて…。」
「…そういうことかよ。」
仕方なく布団を敷くと、そこにほの花を横たわらせた。顔に触れてみると少しだけ微熱があるようだったが、解熱剤を飲むほどではなさそうなので、夜着を出す。
「着せてやるからちょっと待ってろ。俺も着替えてくるからよ。お前は昼まで絶対ェに布団から出さねぇからな。」
「…あはは…、ごめんね。宇髄さんの言うこと聞いておけば良かった…。もう体が言うこと聞かないの…。」
「あれだけ働けば当たり前だろ。自分が思ってるよりも過重労働してたからな。」
ボーッとして天井を眺めたままのほの花に「ツラかったら寝てても良いぞ」と声をかけて部屋を出るが、あの様子じゃ暫く休ませた方が良さそうだ。
張り詰めていた糸がぷつんと切れたように茫然としていたし、恐らく頭で考えるよりも先に体が限界を迎えたのだろう。
虚ろな目をしたほの花が状況を把握するには時間がかかりそうだ。
部屋に戻るとまきをにほつれたところの修繕を頼んでおいた夜着が置いてあったので、それに着替えるとほの花の部屋にもう一度向かった。
ほの花を抱きしめてるわけでもないのに何故かその夜着から彼女の香りがしたような気がしたのが気のせいでないことに気付いたのは少し後のこと。