第20章 未来花嫁修行※
産屋敷様の屋敷からの帰り道。
あの能力を使っていないのに少し体が重い気がした。体が発熱している様子もないし、ほんの少し疲れたような感覚。
宇髄さんの言う通り、ちょっと忙しかったのかもしれない。
今日はゆっくりと休もうと宇髄邸に帰るが、お夕飯をみんなで食べていた時に、しのぶさんのところの鎹鴉"艶"が飛び込んできてひっくり返りそうになった。
「ほの花ーー!!怪我人多数ーッ!応援求ムーーーッ!!」
「え?!怪我人?!」
「急ゲーーッ!蝶屋敷ーーッ!」
「わ、わかった!わかりました!」
せっかくありつけたご飯だったのに目の前にあった味噌汁だけ啜ると「ご馳走様でした、行ってきます!」と挨拶もそこそこに部屋にあった薬箱と余分に作ってあった薬を引っつかみ屋敷を出る。
(…はぁ、この分だと午前様かなぁ…。寝れると思ったのに…。)
疲労感を感じていなかった時はあれほどまでに動けていたというのに、一度疲労を感じてしまうと体が重くて仕方ない。
それでも今から行くところは人の命に関わるところ。
こんな中途半端な気持ちで行っては絶対にだめなところ。
頬をパンパンと叩くと、蝶屋敷に向かって全速力で駆けていく。
一分一秒が人の生死に関わることは分かってる。
だから急がないといけない。
(私は後からでも眠れるんだから…!)
しかし、いつもより重い体は走るという単純な動作だけでこうも息が上がるものなのか。
蝶屋敷に着いた時には肩で息をする自分が情けなくて仕方ない。
こんなに疲労が溜まっていたのだろうか?
気付かなかった。
琥太郎くん達のこともあって、考えることがたくさんで、やりたいこともたくさんで、宇髄さんに求めてもらいたくて必死だったから。
無我夢中だったこの数週間の疲れが一気に噴き出すように額に汗が流れた。
熱があるわけではなさそうだが、とにかく疲れている。体が重くて仕方ない。
そんな体を引き摺るように蝶屋敷の門を開けると怪我人でごった返していて目を見開いた。
体が重いとか言ってる場合ではない。
慌ててしのぶさんのところまで行き、声をかけると、すぐに重症の人から応急処置を行った。
一人でも多くの人を救うために。