第20章 未来花嫁修行※
「天元も、心配だって言うのもあると思うけど、ほの花にもっと甘えて欲しいんじゃ無いかな?ほの花が天元に何かしてあげたいと思うのと同じだよ。」
「…十分甘えてると思うんですけど…、確かに宇髄さんはよくそう言ってくれるんです。でも、私がよく分からなくて…。」
"甘えろ"と言われるのは日常のことだが、毎日甘えてる。彼の家に住まわせてもらって、愛されて、たまに贈り物もしてくれる。
夜も毎日抱きしめて寝てくれてるのに何を甘えれば良いのだろうか。
「そうだなぁ…。つらい時に言ってもらえないのが僕だったら悲しいかな。」
「つらい時…、ですか?」
「例えば今日は疲れたとか些細なことでも言ってくれると嬉しいかな。そう言う弱音とか愚痴って言うのかな…言いにくいことを教えてくれると頼りにしてくれてるのかなって思うけどな。」
産屋敷様はいつも私に答えをくれる。
それが答えかどうかはちゃんとは分からないけど、少なくとも自分の中には無い考えをくれるの。
私が決め込んでしまった"答え"も違う考えを知れば、それが"全ての答え"でないことを教えてもらうことができる。
産屋敷様と宇髄さんは違うけど、少なくとも私よりも男心というのを知り得ている彼の言葉は目から鱗のことばかり。
(…宇髄さんもそういうことを言ってたのかな…。)
本当のことは本人にしかわからないが、自分の考えが独りよがりで婚約者としての常識みたいなものを彼に押し付けていたことに肩を落とす。
(…そうだ、ちゃんと宇髄さんの望んでいることをしてあげないと…意味がない、か。)
漸く自分の考えに一区切りをつけると、産屋敷様がくれた羊羹を食べてお茶を飲み干した。
「ありがとうございます!気持ちがスッキリしました。宇髄さんとちゃんと話してみます。さ!お薬作ってしまいますね。遅くなってごめんなさい。」
「ほの花が納得できたならよかった。おかわりは?」
「あはは…、も、もう大丈夫です。」
薬を取り出す私に産屋敷はまだ羊羹を勧めてくれたが流石に申し訳ないので手早く薬を調合すると、そそくさと屋敷を出る。
それなのに残りの羊羹を手土産で貰ってしまって何とも恥ずかしくて顔が熱くなった。