第20章 未来花嫁修行※
「役に立ってないなんて思ったら天元が可哀想だよ。君は生きてるだけで彼を癒してあげてるんだから。むしろ君がいつものように明るく元気にそばにいてあげることが一番だと思うな。」
そう言って笑う産屋敷様の顔は優しい。
流れる涙が膝の上に落ちていくけど、先ほど流した涙とは比べ物にならないほど温かく感じた。
「…私が間違っていたんでしょうか。」
「ほの花は何も間違ってなんかないよ。好きな人に尽くしたいと言う女性の心理は僕なんかには理解しきれないと思うけど、男はね、それよりもそばで愛する人の笑顔を見たいものなんだよ。我儘でごめんね?」
産屋敷様が悪いわけではないのにそうやって謝ってくれる大人な対応に途端に自分のが独りよがりな想いを宇髄さんに押し付けていたように思い恥ずかしくなった。
産屋敷様の言う通り宇髄さんはいつも"俺の腕の中にいろ"と事あるごとに言っていた。
それは私のことを心配していただけでなく、宇髄さん自身が私のそばにいてほしいと思ってくれていたからなのかな…。
勿論多少はあると思うとは思っていたけど、もしそうなら私は彼の願いを無視したことになってしまう。
考え込むように下を向いている私に産屋敷様が突然「ほの花お腹は空いてない?」と聞いてきた。
お昼ごはんを食べ損ねていたとは言え、当主を相手に「お腹空きました〜!ぺこぺこですー!」なんて言える強心臓ではないため、首を振るが間の悪い腹の虫が此処ぞとばかりに"きゅるるーー“と鳴くものだから本気で土の中に埋まりたくなった。
「ひゃあああ…申し訳ありません申し訳ありません申し訳ありませんん…!!」
「ハハハッ、もし良ければ先程たくさんの羊羹を頂いたからどうかな?君のお腹の虫が鳴らなくてもほの花にあげようと思ってたから気にしなくてもいいよ。」
そうやって産屋敷様は言ってくれるけど、きっとお持ち帰りで手土産でくれようとしていたに違いない。
それなのにすぐにあまね様に言って、切ってお茶と一緒に出してくれた。
(…私、何しに来たんだろう…。本当に…。他の柱の人とかに見られたくない…。絶対怒られる…。)