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陽だまりの先へ【鬼滅の刃/音夢💎】R指定有

第1章 はじまりは突然に




母は薬師の家系に生まれたが、海の向こうの国の出身のため異国の歌や踊りを教えてくれた。幼いながらに美しい歌声と蝶のように舞う母が憧れだった。
だから私がそれらに興味を持つことは必然だったように思う。

神楽家にはやらねばならない宿命があったらしいのだが、女として生まれ、上に4人の兄もいたことで私はとにかく自由に育った。

父や兄は「ほの花は気にしなくていい」と言ってくれていたこともあり、私は本当に何も知らずに日々を過ごしてきた。

だから呑気に自分の歌と踊りで生計が立てられるかどうか全国津々浦々放浪の旅に出ていたのだ。まさかその間にこんなことが起こっていたなんて思いもしなかった。

口に出してしまえばきっとあの3人に怒られてしまうから言えないが、状況的に恐らく神楽家の中で最も生き残ったところで意味のない人間が生き残ってしまった。

"鬼舞辻無惨"という人がどういう人なのか分からない。鬼とは何のことなのか。
少なすぎる情報に一喜一憂しながら、薬品庫の中から産屋敷様にいつも送る薬を見つけて大きな風呂敷に包み込む。

薬を送ることはあれど、私はその方にはお会いしたことはない。
父と母はたまに2人で出向いていたようだが、名前しか聞いたことのない人物を突然訪ねていき受け入れてくれるだろうか。

娘だと言えば会ってくれるだろうか。


いずれにしても此処には暫く戻ることはないだろう。気分も滅入るし、そのせいで体調がおかしくなりそうだ。
吐き過ぎてもう胃液で喉も痛いし、体もフラつく。

一刻も早くこの里からでなければ…。

私はありったけの薬草を詰め込み、汚れていた服を着替え、生活できるだけの準備をすると3人と共に産屋敷邸へ向かうことにした。

3ヶ月前、此処から旅立つ時の心境とは180度変わっている。重苦しい空気の中、自分達の足音だけが耳に入ってくる。

それでも木の影から差し込む太陽の光だけが私たちの背中を押してくれていた。


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