第20章 未来花嫁修行※
「ほの花さん。正宗様とお買い物に行ってきますけど、何かいるものありますか?」
敷布を干していると雛鶴さんが声をかけてくれた。そこ後ろには正宗がいてこちらを見て眉間に皺を寄せている。
(…何よ、その顔。)
「あ、いえ。特に何もないです。ありがとうございます。」
「ほの花様、それが終わったら昼寝でもしたらどうですか?クマ酷いですし、顔が死んでます。」
「え?そうですか?」と不思議そうに私を見る雛鶴さんをよそに正宗は呆れたような顔をしている。正宗は子どもの頃から一緒に過ごしてきたお兄ちゃんのような存在。だからちょっとした変化に敏感だ。顔が死んでるのは間違いなくいまの気持ちが完全に出てしまっているだけで、体調不良なわけではない。
「…別に大丈夫。今から薬作るし、お昼から産屋敷様のとこに行くから寝てる暇ないの。」
「それならいま休んで下さい。宇髄様にまた心配かけますよ。
「はーい。分かった分かった。」
「…全然分かってない時の返事ですけどね。」
こうなると正宗は、いや、元護衛の三人も三人で心配性なので宇髄さんの二の舞だ。逃げるようにそこから去ると温室に向かう。
産屋敷様の調合に行く時は必ず新鮮な西洋薬草を使った薬膳茶を煎じて持っていく。
温室ではすっかり里から持ってきた西洋薬草が育っている。先日の嵐でもビクともしなかったところを見ると宇髄さんは部下の人にだいぶしっかりとしたものを作ってもらったのだろう。
そのおかげで何一つ飛ばされたものはない。
その温室からいくつか薬草を見繕うと部屋に持っていき煎じていく。
ふと鏡台に映る自分が目に入るが確かに顔は死んでる。
(…泣いたからかなぁ。)
かと言って自分の化粧の技術では一昨日の雛鶴さんのようにできないだろうし、せめて白粉だけ塗り直すと少しばかりマシに感じた。
美丈夫な宇髄さんの横を自信持って歩けるようになる日が自分に来るのだろうかとまたも悲しい気持ちになってきたので、慌てて考えを振り切る。
考えれば考えるほど悪いことばかり浮かぶのは悪い癖だ。