第20章 未来花嫁修行※
「弁当が必要なら雛鶴にでも頼むから」と言われて凄く悲しかった。婚約者なのに彼の身の回りのことを頼むのはやっぱり第一選択は元奥様たち三人の誰か。
鬼殺隊としても薬師としてもみんなに認めてもらえたのは宇髄さんのおかげ。
それなのにその宇髄さんに婚約者としては認めてもらえてないみたいで泣きたくなった。
もちろんそんなことするよりも今は仕事を優先しろという彼の気持ちもわかるし、無理するなと言う心配してくれる気持ちもわかる。
でも、仕事もちゃんとして、体も大丈夫なのに認めてくれないのは何で?
そんなに頼りない?
そんなのことは期待してないってこと?
鬼殺隊に入らなければ好きな人のところに嫁いでその人に一生添い遂げるとぼんやり思っていたので母からも花嫁修行と称して家事全般はちゃんとできる。
宇髄さんだってお弁当あんなに喜んでくれたのに…喜んでくれたのは最初の一度きり。それからは心配そうに眉間に皺を寄せて申し訳なさそうにする。
私はただ宇髄さんに喜んで欲しかっただけ。
さすが俺の婚約者と褒めて欲しかっただけ。
それなのに朝ごはんに一品自分の料理を足しても、枕元に置いた薬膳茶も、それを見ただけで心配そうに眉を寄せるだけでちっとも喜んでくれない。
それがどうしようもなく悲しい。
彼が任務に行く前にみんなで食べた昼ごはんは彼のご所望通りずっとそばにいたので、三人を手伝うこともできずに私は彼の横で食べるだけ。
「お、これうめぇじゃん。」とまきをさんに言う宇髄さんを見て、泣きそうになった。私だってそうやってにこやかに美味しいって言って欲しかっただけなのに。
婚約者なのに、"夜の性欲処理要員"とされている気すらしてしまう。
愛してくれてるのは分かってる。
でも、求められることは夜一緒に寝ることやそばにいることだけ。
何か必要なら当然のようにあの三人の中の誰かに頼む宇髄さんを見るのが苦しくて苦しくてたまらなかった。