第3章 立ち振る舞いにご注意を
「わぁっ…!美味しそう…!」
不死川さんの家のお台所を借りてお茶を淹れると美味しそうなおはぎを出してくれて思わず感嘆の声が出る。
つい最近まで食事も喉を通らなかったというのに随分回復した。それもこれも宇髄さんのおかげでやはり彼には足を向けて寝られない。
だが、今日お誕生日だという彼に最高の贈り物ができたことが少なからず自分を褒めてやりたいと思わせた。
「好きなだけ食え。たくさんあるからよォ。」
「ありがとうございます…!では一ついただきますっ!!」
母が作ったおはぎより大きなそれは一つで十分な重量があるが、最近食欲が出てきた私はそれを「美味しそう」と感じられる。きっと難なく食べられるだろう。
一口頬張ると優しい甘さとほんのりと感じる塩味が口に広がり思わず笑みがこぼれた。
「体調は良さそうだなァ?」
「え?…は、はい。」
急に体調のことを聞かれたので、何故聞かれたのかわからなかった私は変な顔でもしたのだろう。不死川さんは苦笑いをして自分もおはぎに手を伸ばした。
「先週、たまたま町で会った時に宇髄の野郎がそう言ってたからよォ。お前が食べられそうなモン買いに来たって言ってたぜ。」
……え?
そんな話は初めて聞いた。いや、食事を持ってきてくれたりもしたけど、そんなこと一言も言ってなかった。買ってきてくれたものは食べられる時と食べられない時とあったけど、食べられなくても気にしないように全部宇髄さんが食べてくれてた。
まさかアレは全部宇髄さんがわざわざ出向いて買ってきてくれていたのだろうか。てっきり奥様達の誰かが買ってきてくれていたと思っていた。
彼が優しい人だということは十分過ぎるほど知り得ているが、そんな風に自分のことを考えていてくれてたということを他者から聞いてしまうとどうしようもないほど嬉しくて、胸がキュッと締め付けられ、顔が熱くなった。