第20章 未来花嫁修行※
宇髄さんは一つ一つ生地を手に取ると私に合わせて「そうだなぁ…」と考えてくれている。その姿を見るだけでなんて頼りになるのだ…!と先ほどまで感じていた気持ちは一新した。
「そもそも私、こんな綺麗な浴衣着ても変じゃないかな?通行人の人に後ろ指差されない?」
「差されるわけねぇだろ…。クソ可愛いんだからもっと自信持て。」
「それは宇髄さんが色眼鏡で私を見ているからだよ…?ねぇ、気づいてる?」
「はいはい。わかったわかった。」
私の心配を全く取り合ってくれない宇髄さんに不満げな視線を向けるがちっともこちらを見てくれずに浴衣を選ぶのに夢中だ。
自分が選べなくて、手伝ってもらっているのだから有難い限りなのだが、彼が私のことを可愛い可愛い可愛い可愛い可愛いって言ってくれるのは完全に色眼鏡だ。
嬉しいし、幸せだけど、里にいる時ここまで言われたことなどないのだから流石にそこは私とて心得ているのに、彼は何処でもかんでも私の賛辞を言ってくれるのでその内誰かに後ろ指差されやしないかとヒヤヒヤしている。
そんなこちらの心模様など知る気もないのだろう。一つの浴衣を私に合わせると「これは?」と聞いてくれた。
手に持っているそれは濃紺に大きな白い百合が咲き誇る素敵な生地。
事あるごとに白いお花の装飾品を贈ってくれている宇髄さん。自分では分からないけど、白い花が私に合うと思ってくれているのだろう。
「…似合いますか?」
「お前は何着ても可愛いけど、すげぇ似合うぜ。めちゃくちゃ色っぽい。な?女将。」
「ええ、とてもお似合いです。まるで天女のようですわ。」
あまりに二人でベタ褒めしてくるので顔が熱くなってきて下を向くことしかできず、狼狽えてしまう。
「ほの花は?気にいらねぇ?」
「…っ、そ、そんなことない…!き、着こなせるか不安だっただけ…。」
「はいはい。じゃあ女将、これにするわ。」
「畏まりました。宜しければこちらで小物とかは合わせてご準備しておきましょうか?」
「あー、頼むわ。コイツこんな感じだし。女将に任せるわ。似合いそうなやつ選んでやって。」
私の性格を見越して宇髄さんは店主の女性にそう頼んでくれてホッとした。これ以上何かを選ばなければならない労力を考えたら、薬の調合より骨が折れそうだと感じたから。