第20章 未来花嫁修行※
全ての採寸を終えると店主がたくさんの生地を持ってきてくれた。
その種類の多さに圧倒されて固まる私を見て、苦笑している彼女が一つ一つ丁寧に生地の説明をしてくれているが、ちんぷんかんぷんでぽかんとしてしまう。
そんな私を見兼ねて「宇髄様に選んでもらいますか?」と助け舟を出してくれたので、大きく頷く。
こんな風に自分で自分のものを選ぶのは少し苦手だ。服飾系は特に。
何が似合うのか分からないし、綺麗だと思ったやつが自分だと見劣りしないか心配になる。
母が異国出身のこともあり、顔立ちが西洋寄りなのは分かっていたし、純日本の和服がそこまで似合っているかどうかもわからない。
里にいる時はそりゃあ見知った顔しかいないわけで、お世辞でも「似合ってる」と言ってくれていたかもしれないが、いざ里を出ればそうはいかない。
綺麗な装飾品などは無限にあるし、それを着こなす綺麗な女性もたくさんいるわけで。
小さな狭い世界で生きてきた自分は物が溢れた世界に憧れはあれど、目の前に広げられても自分の似合うものなどわかるはずもなかった。
宇髄さんを呼びに行ってくれた店主の方がいなくなった部屋の中には所狭しと浴衣の生地が広げられている。
淡い薄浅葱に水仙があしらわれているもの
白地に大きな牡丹が咲いている可愛らしいもの
裾に桜が咲き乱れている品のあるもの
それ以外にもざっと見るだけで三十通り以上の生地の数々に目が回りそうだ。
座り込み一つ一つじっくり見てみるが、どれも可愛いし着てみたいと思う反面、それが似合うか分からないし、こういう時の決断力のなさは我ながら定評がある。
すると、聞き慣れた足音が聴こえて襖が開いた瞬間、大好きな顔が目に飛び込んできたのでホッと一息吐いた。
「宇髄さぁん…。」
「まぁ、こんなこったろうとは思ったけどな。」
しゃがみ込む私の頭に手を乗せて撫でてくれると宇髄さんも隣に座り込んだ。