第20章 未来花嫁修行※
隣にいる宇髄さんは休みだから着流しをサラリと着ていて髪も下ろしててそれが物凄くカッコいい。
横にいるのが恥ずかしくなるくらい。
でも、すぐに腰を引き寄せてくれるから"俺の女"って言ってもらえてるみたいで嬉しい。
"行きたいところがある"と言って歩くこと数十分。目的の店の前で止まると「着いたぞ」と言われたが、立派な門構えのそれに若干慄く私。
「…え、此処なんですか?」
「呉服屋。」
「ご、呉服屋さん…。」
途端に緊張し出しておろおろとする私とは違い、堂々とした宇髄さんに手を引かれて中に入ると馴染みなのか店主の女性が声をかけてきた。
「あらあら、こんにちは。今日は随分と可愛らしいお嬢様をお連れだこと。」
「俺の女。美人だろ?」
「はい。とてもお綺麗ですね。宇髄様のお隣に並んでると美男美女で素敵ですわ。」
「だろ?自慢の婚約者なんだ。今日はコイツに浴衣を仕立てたくてな。頼むわ。」
突然宇髄さんに背中を押されて前に出されると店主の方ににっこりと微笑まれる。つられるように口角を上げるが、先ほどまで空気のように感じていた会話の内容が急に鮮明になり、後ろを振り向いた。
「え、…?ゆ、浴衣?」
「何だよ、忘れたのか?今度出かける時はお前の浴衣仕立てるって約束しただろ?」
「…そ、そうだっけ…?」
「ったく、お前な。本当に欲のない奴だな。浴衣はあるっつってたけど、その浴衣は男の前で着たことあんだろ?そんな浴衣は俺の前では着せねぇからな。ほら、採寸して、生地選んでこい。」
「あ!ああ!そ、そうでした…!頂き物の浴衣だけど…、で、では…お願いします。」
そこまで言われて漸く思い出した。
琥太郎くんの家に初めて宇髄さんと行った時に、荷物持ちが不満そうで私の物なら持ってやってもいいって言ってくれた時のことだ。
バタバタしていたし、そんな口約束をちゃんと覚えていてくれたなんて思ってもいなかった。
きっと彼の中では決定事項だったのだろう。その気持ちが嬉しくて益々顔がにやけるのが止まらなかった。