第20章 未来花嫁修行※
漸く涙が止まったほの花の手を引くこと数十分。
散歩しがてら目当ての店に向かっていると「どこか行くの?」と顔を覗き込まれた。
涙のせいで少し薄くなってしまったが、変わらずいつもより色香を漂わせる化粧の威力は健在。
先ほどからチラチラとほの花に見惚れている野郎どもに見せ付けるように腰を引き寄せた。
見せ付けたい気もするし、見せたくない気もする。
「ああ。行きてぇところがある。」
「そうなの?どこだろう…?楽しみっ。」
お互い忙しくてこんな風な穏やかな時間を過ごすのは久しぶりで、ほの花が楽しみにしていたのも肯ける。
もちろん休みさえ合えばいくらでも連れてきてやりたいとは思っているが、なかなかそれも叶わないのが心苦しいところだ。
しかしながら、腰を引き寄せたことでグッとほの花との距離が近くなっても野郎どもの視線は隣の美しい女に注がれているのがどうにも腹立たしくなってきたとき、ほの花が俺の腕に絡みついてきた。
滅多に外では自ら触れ合ってこないので驚いて彼女を見ると赤い顔をして下を向いている。
「ほの花、どうした?」
「…だって、女の人が、宇髄さんのこと見てるから…私のだもん、って思って…。」
「……お前、此処でぶち込まれてぇのか?」
思いがけないほの花からのヤキモチとでも思える発言を聞いて目が眩んだ。
たまにこうやって不意打ちに俺の心を奪うようなことを簡単に言って退けるほの花に頭を抱えるしかない。
「な、何でそうなるのっ!もうー!!」
「俺の方がいつも"ほの花は俺のだ"って思いながら生きてるっつーの。」
「……わ、私だって、思ってる、もん。でも、いつもあんまりお出かけできないから…。改めて宇髄さんって美丈夫だから…、女の人が見てるのが嫌だったんだもん…!」
「さっきの言葉忘れんなよ?俺、今日はお前のこと抱き潰すからその後ゆーーっくり寝ろよ?熟睡できるぞー?」
「…え、あの、優しく…は?」
「ちょっと何言ってるのかわかんねぇ。」
先ほどおねだりされた言葉を早々に跳ね除けると可愛い恋人とこれでもかと抱き寄せて見せ付けるように歩いてやった。