第20章 未来花嫁修行※
「…私、ひょっとしたら天才かもしれません…。」
「え?あ、終わりました?クマ隠れましたか?」
「はい?…あ、ああ!クマ!クマですね?クマは隠れました!」
いま、絶対雛鶴さん忘れてた…。
最重要項目はクマ隠しだと言うのに雛鶴さんは一体何を見て自画自賛をしたと言うのだろうか。分からずにキョトンとしていると外で「ほの花ー?」と宇髄さんが呼ぶ声が聞こえた。
自室にいなかったから探してるのだろう。
「はーい!いま行きまーす!」
私は大きな声で返事をすると、雛鶴さんに御礼を言うと慌てて自室に戻り、着替えてから宇髄さんの部屋に向かった。
「宇髄さーん!ごめんね、遅くなっちゃった…!」
「いや、いいけど…、って、へ?!」
襖を開けた私を見るや否や驚いて目を見開く宇髄さん。
慌てて着替えたことで着物が捲れてたのだろうか?と確認するが、そんなこともなくキョトンと彼を見遣る。
それどころかもう今から出発するはずなのに私を部屋の中に引き入れるとそのまま襖を閉めた。
「…え?お出かけは?」
「……するけど、お前、それは反則だろ…?」
「え?私、何かした?」
顔に手を添えて、長い指で首の後ろを掴まれるとそのまま引き寄せられて彼の唇が降ってきた。
「ん…っ!」
益々分からない。
こんな出がけの口付けにしては何故舌が入り込んでくるのだ。先ほど夜はシないと宣言してばかりの人とは思えないほどの情熱的な口付けに私の脳も蕩けそうだった。
もう片方の手が腰からお尻を弄ってきた瞬間、慌てて彼の胸に手を置いて押し返した。
「…何だよ。」
「な、何だよ、はこっちの台詞だよ!今から出かけるんじゃないの?」
「あー……そうだった。でも、お前が悪ぃんだぞ?何なの?それ。俺のことどうしたいわけ?そんなの見たら抱きたくなっちまうだろ?綺麗過ぎて。」
「…そんなの?」
初めて着る着物でもないし、髪型もいつもと同じ。彼の言う"そんなの"の正体が皆目見当も付かず、ぼーっと考えていると再び唇が降ってきた。
一体どういうことなのだ。
余裕の無さそうな宇髄さんにどうしたもんか、と取り敢えずはその唇を受け止めた。