第20章 未来花嫁修行※
結局、感想は一度しか言ってくれなかったけど、全てを平らげて「ご馳走さん」と言って口付けてくれた宇髄さん。
見返りが欲しくてやってるわけではないし、それはそれでいいと思うが、自分のクマのせいで好意的に受け取られなかったのは残念で仕方ない。
膳を下げて後片付けをすると、お昼から出かけるための準備をしなければと自室に急ぐ。
しかし、どうせまたクマのことを気にされるのは関の山なので、途中で雛鶴さんの部屋を訪れた。
「…雛鶴さーん。居ますかー?」
「ほの花さん?どうぞー?」
三人の元奥様たちは年は変わらないのに自分が末っ子だからか、どうも頼りにしてしまう。
雛鶴さんはその中でも特にお姉さんぽくて甘えてしまいがち。
今日も今日とて、クマのことを相談するために部屋にきたわけで。
優しい声色が聞こえてくると、素早く入室した。
「雛鶴さん、このクマってお化粧で消えますかー?」
「あらあら。天元様に心配されちゃいました?」
「…そうなんですよー。」
「ふふ。天元様ったらほの花さんのことになると心配性ですもんね。ちょっと待ってください。やってみましょうか。」
雛鶴さんはお化粧品が入った箱を持ってきてくれて、そこから何が何だか分からない瓶をいくつか取り出した。それには見覚えがあるものもあってちょっとだけ顔が熱くなる。
「あ、分かりました?天元様の愛の証を消した時に使った物ですけど、顔にも使えるのでやってあげますね。」
きっと顔は真っ赤に染まっているのだろう。雛鶴さんがすぐに気付いてその瓶がいつ使った物なのかを教えてくれた。
宇髄さんに激しく愛されてしまった日にはもう何度かお世話になっている。
「ついでにとびっきり可愛くしてあげますね!ほの花さん、いつもすこーししかお化粧してませんもんね。まぁ、それでも十分すぎるほど可愛いんですけど…天元様驚かせちゃいましょ。」
悪戯をするような顔でそう言ってくれる雛鶴さんに返事をする間もなく、あれよあれよと顔に化粧品が塗られる。
特段、お化粧が嫌いというわけではないが面倒だったので身だしなみ程度にしかしたことがない。
それでも、宇髄さんの驚く顔は見たいと思い、なされるがままにそれを受け入れた。