第20章 未来花嫁修行※
宇髄さんの視線が痛い。
じーーっと見つめられるのはよくあるのだが、それはいつも熱っぽい視線であって、こういう視線はできれば受けたくない。
「…ねぇ、ちょっと見過ぎだと思う、んだけど…。」
「俺の女の顔見ちゃ悪ぃのかよ。」
「いや、悪くない、けど…。」
何で見てるかはわかる。きっと私の顔色とか見てるんだ。さっきから睡眠不足のことしか気にしてもらえない。せっかく宇髄さんのために煮物作ったのに全然味わってもらえないどころか一言感想言ってくれただけ。
流石に悲しくなってくるが、彼が私のことを気にしてくれているのは分かっているので文句も言えない。
お互いの想いが交わらないだけ。
宇髄さんは私の体のことを心配してくれていて
私は宇髄さんの婚約者として彼のためになることをしたいだけ。
あれだけ体を交えているというのにこうも想いが交わらないかと逆に興味深いが仕方ない。
此処は一旦、私が引くしかないようだ。これは私の勝手な想いであって心配をかけていては意味がない。
「…今日はね、薬は全部作ってあるから早く寝られるし、本当に今は眠くないんだよ?体も大丈夫。」
「……そっか。」
「宇髄さんは今日の夜はお仕事ないの?」
「ああ。今日はな。」
久しぶりに夜はゆっくりできるのだ、という事実に嬉しくて目尻が下がる。いつもゆっくりできる時はお互いの体を味わうかのような情交をする。激しくされるのも嫌いではないが、そういう肌と肌が触れ合うだけでも気持ちいいと感じる情交も好き。
そう思ったのに…
「今日は夜抱くのは我慢すっからゆっくり寝ろよ。」
「……え?」
「そんなクマ作ってるほの花抱けねぇからな。」
呆れたようにヨシヨシと撫でてくれるが、宇髄さんらしからぬ発言に目を見開くのはわたしだけ。
いつも隙あらばどこででも発情しているのではないかと思うほど、お尻を撫でられたり、腰を引き寄せてきたりすると言うのに…!
あまりに"らしくない"宇髄さんに驚きよりも残念だと思う気持ちが先行するのは、私もそんな彼に随分と絆されているのだと言うことだ。