第20章 未来花嫁修行※
「宇髄さーん。お待たせしましたー!」
俺が部屋で顔の熱が冷めるのを待っているとほの花が膳を持ってきてくれた。いつものほの花がいつもの笑顔でにこやかに持ってきてくれたその匂いに呼応するように腹の虫がギュルと音を立てる。
「ありがとな。腹減ったー!あ、そうだ。弁当も美味かった。悪かったな。」
「えー?何で謝るの?食べてもらえて嬉しい。ありがとね。はい。どうぞ。」
座布団の上に座ると目の前にほの花が膳を置いてくれる。目の下のクマが気になって手を伸ばしてそこをなぞってやると不思議そうに小首を傾げた。
「ん?なぁに?」
「本当に寝なかったのかよ。大丈夫か?」
「あはは!本当に心配性だなぁ。大丈夫だよ。」
そう言われてしまえばそれ以上何も言えずに膳を見つめた。
美味しそうに湯気を立てている焼き魚
味が染みた煮物
味噌汁
小松菜のおひたし
漬物
白米
いつもより品数が多いなとは感じたが、さほど気にせず「いただきます」と言い、煮物に一口食べるとすぐに気付いたことがある。
これが雛鶴が作った物じゃないということだ。
すぐに隣でお茶を淹れてくれているほの花を見ると声をかける。
「…なぁ、これってまさかほの花が作った?」
「え?どれ?」
「この煮物。」
「あー!そうそう。それは私。あ、今魚を焼いたのも私だよ。」
「魚はこんなに熱々なんだから今焼いたって分かるわ!!」
ほの花のとぼけっぷりに会話を持っていかれたが、慌てて引き戻す。
「いつ作ったんだよ。」
「え?さっき。宇髄さんが寝てた時。」
「作んなくてもいいから寝てりゃよかったのに…。」
「…不味いってこと?」
しかし、悲しそうな顔をしたほの花にすぐに否定を返す。
「そうじゃなくて…!美味ぇんだけど、さ。お前睡眠本当に取れてるか?俺はそっちが心配なだけで…。」
「良かった!不味いのかと思ったじゃんー。はい、お茶どうぞ。」
何度も睡眠不足のことを気にして聞いてしまっているので流石に「またか」と言う顔をして大して取り合ってくれないほの花。
本人が大丈夫だと言っているのに確かに聞きすぎかと思ったが、笑顔のほの花が無理してるようにしか見えないのに言葉を飲み込むことしかできなかった。