第20章 未来花嫁修行※
ほの花が朝餉を持ってくるまでの間、少しだけ琥太郎のことを見てやろうと思い、履き物を履いて庭に出る。
「教えてやった準備運動やってたのか。いい心掛けだ。頑張れよ。好きな女は自分で守れるようにならねぇとな。」
わしゃわしゃと頭を撫でてやると嫌そうに顔を歪ませるが前ほど嫌悪感を全面に押し出してくることは無くなった。寂しくもあるが、嬉しくもある変な気持ちだ。
「…ほの花が言ってたけど、おっさん、すげぇ強ぇんだろ。」
「ん?おー、まぁな?」
「強くてカッコよくて優しくて自慢のコイビトなんだってさ。」
「…へ?」
「ずーーーーーーっと顔赤くしながらあんたのこと褒めてて面白くねぇの何のって。まぁ、でも、世話んなったのは間違いないから反論はしなかったけどさ。」
ほの花が俺のことをコイツに話してくれていたことは驚いたが、褒め倒してくれていたことにはもっと驚いた。あまり表立って惚気たりしない奴で、二人の時くらいしか甘えてきたりもしない。
そんなほの花が子どもだが琥太郎にそんなことを話してくれたのは嬉しくてたまらなかった。
「…そ、そうか。」
「二人して顔真っ赤にしてんなよな!!腹立つな!!しっしっ!俺はまだ準備運動すんだから部屋でほの花の飯が来るの待ってりゃいいだろ!」
いつもなら「羨ましいのか?餓鬼」とでも言いたいところだが、本人に直接誉められるよりも嬉しくて柄にもなく顔が熱くてたまらない。
琥太郎にさえ指摘されてしまったので仕方なく踵を返し、部屋に戻ることにしたが、暫く顔を手で覆って天井を見つめる羽目になった。
二人きりの時か情交中であれば愛の言葉を紡いでくれるほの花。そこに不満はなかったし、彼女からの愛は十分すぎるほど感じていたから問題はなかった。
だけど、こんな風に周りにも言ってくれると……
「…これ以上"ほの花馬鹿"にさせんなよな。」
外からの光が差し込む部屋の中で人知れずためいきを吐いた。