第20章 未来花嫁修行※
しかし、婚約者として何もできていないのは間違いないので私だってタダでは引き下がれない。
とりあえず出来ることだけしていこうと意気揚々にお弁当を作り始める。
炊き込みご飯をおにぎりにすると、好きだと言ってくれただし巻き卵を添えて経木に包んだ。
「わぁ、いい匂い〜!」
「炊き込みご飯、余ったので後でよかったら食べますか?」
「わーい!頂きますー!」
残った炊き込みご飯もおにぎりにするとお皿に並べて須磨さんに渡すと、そうこうしている間に、宇髄さんが出発する時間になってしまったので慌てて部屋に向かった。
「宇髄さーん!いますかー?」
襖を開けると宇髄さんが隊服に身を包み、日輪刀を背中に身につけているところだった。
後ろからそれを支えて手伝うとその重さがズシリと腕にかかる。
(…宇髄さんの日輪刀ってこんなに重いんだ。そりゃこんなに筋骨隆々なわけだ。)
彼の逞しい肉体の理由を潔く知ると、日輪刀を付け終えた彼がこちらを振り向いて頭を撫でてくれる。
「ちょうど今行くとこだったんだけど、どうかしたか?」
「あ、あの、…、これ…良かったら。」
「ん?へ、っ?え、いいのか?」
やはり嬉しそうな顔をして「ありがとな」と言うと触れるだけの口づけをしてくれたのに、その表情はすぐに曇ってしまう。
「嬉しいけど、大丈夫か?無理しなくていいんだからな?」
「え…?全然無理してないよ?」
「そうか?それならいいけどよ。お前忙しいんだから、自分の体のこと優先に考えろよ?」
「うん…?え、あんまり欲しくないならもうやめるけど、…?」
あまりに煮え切らない態度の宇髄さんに不安になってそう聞いてみるが、そこは首を大きく振って「んなわけねぇだろ!」と強く言われるのでホッとした。
「そうじゃなくてよ、やること増えて体壊したら元も子もないってことを言いたいわけ。分かったか?」
「わ、わかったよー。」
むにっと頬を摘まれるが、私の返事を聞くと満足したようでもう一度だけ口づけをすると、「行ってきます」と言って出て行ってしまった。
この時は何故みんなが同じようなことを言うのか理解できていなかった私は、宇髄さんの婚約者として"ちゃんとやりたい"と必死だった。