第20章 未来花嫁修行※
ほの花が薬箱に薬剤を戻している横で琥太郎に声をかける。
「俺は仕事に行ってくるけど、明日の昼に母ちゃんと琥太郎は出かける準備をしておけ。」
「え?母ちゃんと?」
ほの花じゃなくて、俺と出かけると言うことに少し動揺しているように見えたが、この一週間ですっかり俺のことも信頼してくれているようで訝しげな視線は向けられなくなった。
まだ口喧嘩はするけど、そんな変化は少なからず嬉しい気もした。
「ああ。見せてぇもんがある。」
「えー、私は?!私もお出かけ一緒にしたいよー!」
琥太郎がコクンと頷くと同時に横でほの花が俺に向かってそんな可愛いことを言ってくるものだから口角が上がる。
「何だよ、行きてぇの?お前、仕事はいいのか?また夜中にやらないといけねぇなら賛成できねぇけど?」
ここ最近、仕事が溜まっているようで夜まで薬を作っていることもあったので、流石に休める時に休んでほしい。
一緒に連れて行きたいのは山々だが、ほの花のそんな事情を知っていると手放しには喜べない。
「大丈夫!今日の夜までに終わらせるから!」
「おい、夜やるんじゃねぇかよ!!」
「さ、そうと決まれば今から作らないと!じゃ、琥太郎くん!無理しないようにね。」
俺のツッコミは華麗に無視されて、ほの花は鼻歌混じりで部屋を出て行った。
確かにお互いの休みが合わないせいでほの花とは日中出かけることは少ないこともあり、ああやって喜ぶのも理解はできる。俺とて本当はもっといろんなところへ連れて行ってやりたいのだ。
「…ほの花って結構おっさんには甘えん坊なんだな。」
「は?そうか?全然足んねぇけどな。」
「つーか、おっさんも甘過ぎなんじゃねぇの?」
「仕方ねぇだろ?アイツ、死ぬほど可愛いんだよ。わかるだろ?お前なら。」
「……分かるけどさ。」
惚れた弱みを分かってくれるのが随分と年下だが、ほの花に関しては俺も琥太郎も同じ目線で話ができる年の離れた友達みたいな関係になってると思った。