第20章 未来花嫁修行※
抜糸をしたら、ヨード液で消毒をし、ガーゼを付けて終了。
さすが子どもだ。新陳代謝が良くて、治りが早いのが素晴らしい。
「もういいよ。お疲れ様ー。動いてもいいけど痛かったら教えてね。」
「う、うん。ありがと…。」
「いえいえ。」
琥太郎くんの後ろで体を押さえていた宇髄さんが彼を離すとガシガシと頭を撫でてあげているが、嫌がってまた怒り出すかと思いきやされるがまま…。
流石にどうしたのかと思い、私と宇髄さんは顔を見合わせた。
すると突然蹲るように畳に頭をつけた琥太郎くん。
その表情は窺い知れないが、頭を擦り付けるように私たちに頭を下げる彼の姿に目を見開く。
「…この度は、ありがとう、ございました…。この御恩は一生かけて返していきます…!」
まだ子どもだが、小さいながらに彼の決意を感じた。
大人に甘えることもできずに強くならざるを得なかった彼は不運が重なっただけ。
お母さんは先に回復して、少しでも御礼を…と、この家の家事を手伝ってくれていたし、恩義は尽くしてくれていると思っている。
きっと宇髄さんも同じことを思ってくれていると思う。
ふと彼を見ると、呆れたようにため息を吐くと琥太郎くんの顔を上げさせた。
「…子どもが悪いこともしてねぇのに頭なんか下げんな。ほの花は助けられる命を助けたまで。俺はお前らが回復する場所を提供したまでだ。悪いと思う必要はねぇ。」
「…で、でも…さ。」
「助かった命を一生大事にしろ。俺の女が助けたんだ。大事にしなかったらぶっ飛ばすぞ。そんで、いつかお前も困った餓鬼がいたら助けてやれよ。命は繋がっていくんだ。だから悪いと思う必要はねぇ。いいな。二度と謝んな。クソ餓鬼が。」
「なっ、クソ餓鬼っつーな!!」
ぶっきらぼうだけど、これは宇髄さんの優しさだ。わざと怒らせていつもみたいにふざけ合う。
自分が言われたわけでもないのに、宇髄さんの言葉で何故か私が泣きそうになった。
助けた命がまた違う命を助ける。
殺し合いもまたそれに然り。
そこの分かれ道はきっと周りの環境だ。
彼もまたひょっとしたら瀕死の重体で鬼に遭っていたら鬼になっていたかもしれないと思うと、この縁も無駄じゃなかったと思えた。