第20章 未来花嫁修行※
「ちょ、ちょっと待ってくれ!何だよ、その鋏は?!」
「抜糸するの。傷口もだいぶ良さそうだからね。大人しくしてね。」
「なんだよ、琥太郎。怖ぇのかよ?なっさけねぇな。やっぱ餓鬼だな。」
「はぁ?!んだと?!おっさん!」
琥太郎くんとお母さんを助けてから一週間が経つ。二人ともどんどん回復していき、琥太郎くんは今日抜糸をする。
それなのに、いつものように喧嘩をしだす二人の姿はもう慣れたもので風景のようだ。
「もうー。やらないの?やらないならやらないでいいけど、糸から感染して排膿して最悪の場合、足が切断になるけどいい?」
「だからほの花も怖ぇこと言うなって!」
「俺の女をこき使ったんだから死ぬまで感謝しろよ、お前。」
「だぁあっ!大体何でおっさんはいつもほの花にくっついてくんだよ!」
「俺の女と二人きりになんかさせっかよ。」
風景のようなその光景も続くと苛つきは募るものだ。ヨード液と抜糸せんを持ったまま彼らを無表情で見ていたが、一向に止める気配がないので新調したばかりのメスを取り出した。
突然刃物を取り出した私を見て、連動するようにこちらを見た二人にそれを向けて「切れ味試してみようかな?」とにっこりと笑う。
その瞬間、顔を見合わると、慌てたように宇髄さんが琥太郎くんの体を掴み、押さえてくれた。
「おい、抜糸くらいとっととやってもらえ。メスのが痛えぞ。」
「わ、わかった!わかったから押さえんなよ!」
「…次、治療に支障が出るようなら問答無用で二人とも無麻酔でその口縫うからね。私、縫合得意なの。あ、でも…邪魔ばかりされると手元が狂っちゃうかもねぇ?ふふ。」
「「どうもすいませんでした。」」
急に大人しくなった二人を横目に鑷子と抜糸せんを持ち、縫合糸を切っていく。
パチン、パチン──
「……ん?あれ?痛く、ねぇ?」
「当たり前でしょー?糸取ってるだけなんだから。」
そもそも痛いことなどしないわけだからこの騒ぎようは頂けない。
だから私が感じたいらつきも致し方ないことだと分かってもらいたいものだ。