第19章 まだ見ぬ先も君といたい。【其の弍】※
ほの花との蟠りを取るのは必須だった。
心配し過ぎて怒鳴っちまったのはまずかったと思った俺
後先考えず、自らの命も顧みず、琥太郎を助けようとして己の命を軽んじたことで俺に怒鳴られたほの花。
どちらも言い分はあるが、共通して言えるのは故意にしたことではないと言うこと。
死んだら元も子もない。生きてなければいま此処で抱きしめ合うこともできなかったし、お互いの蟠りを取ることももちろんできなかった。
自分の目で愛おしい女が生きている事実が嬉しくてたまらないし、これが当たり前じゃないと言うことが改めて気付けただけでも良かったのかもしれない。
漸く心も体も落ち着きを取り戻しつつあると人間の体は途端に元の日常に戻ろうと欲が出てくるものだ。
「…腹減った。」
「確かにー…。あ!お弁当、足りなかったよね?ごめんね。」
そうだ、昨日は昼ごはんにもありつけずに、どうしたもんかと思っていたらほの花が思いの外、弁当を作ってくれていて嬉しかったのだった。
「いや?その時は大丈夫だったけどよ、普通に時間経てば腹は減るだろ?」
「そっか…!あ、あの、お腹壊してない?」
「おい、お前、毒でも盛ったのかよ。」
「そ、そうじゃ、ない…!けど、初めて好きな人にお弁当なんて渡したから心配だったの!!…お母さんに点滴打ったら朝ごはんにしよ。」
顔を赤らめるほの花が俺の腕の中から抜け出すとアイツらの部屋に戻ろうとしたので手を掴みもう一度腕の中に戻す。
「え。あ、あの…て、点滴しないと…。」
「…ありがとな。美味かった。礼言うの遅くなっちまって悪かったな。」
「いやいや!そんなこと!た、食べてもらえただけで私も嬉しい、から。」
「本当のこと言うと…誕生日に作ってもらったヤツが美味かったからよ。また食べたいとは思ってたんだ。」
腕の中で嬉しそうに笑うほの花が可愛くてもう一度口づけを落とすが、体を弄ろうとしたらそれ以上はさせてくれずに手を掴まれてしまう。
せっかく蟠りを解消したと言うのに、俺の欲はむくむくと膨れ上がり、不満だけが溜まった。
それでも
「…夜にね?」
というほの花に俺は理性を総動員させるしかなかった。