第19章 まだ見ぬ先も君といたい。【其の弍】※
宇髄さんがお弁当を喜んで食べてくれたのを知るとにやける顔を抑えるのに必死だった。
こんなに喜んでくれるならやはりもう少し作ったりしないとな…と考えを改める必要性に駆られた。
だけど…宇髄さんの頭の中にいま"お弁当"の文字はない。
「…夜まで保つ気がしねぇ。あとで仮眠すっからお前も来いよ。」
「…琥太郎くんたちの様子も見ないといけないのー。夜ね?」
「俺の様子も見てくれよ。ほの花ちゃん。たのむって〜。俺、昨日からずっと我慢してんのよ。分かる?」
「そ、そんなこと言われても…、」
「点滴はしねぇと駄目なの分かるから早くやってこい。」
宇髄さんの目がギラギラと情交の時の目そのもので、夜までなど無理なのだということだけは伝わってくる。
私とて先ほどされた濃厚な口づけが秘所を濡らしてしまったことなど冷たくなってしまった下着の感覚でわかる。
しかし、わかるのは私だけではないのだと思い知らされてしまえば、こちらも体が熱くなるばかり。
「…聴こえてンだからな。下濡らしてる癖に。」
そう言うと宇髄さんが隊服のスカートの端から下着越しに秘所に触れた。その瞬間、ぞわりと快感が背中を駆け抜けて、くちゅり、と言う音が静かな廊下に響いた。
「ひゃ、ぁっ…!」
「この音がさっきから俺を煽ってくんの。なぁ、もう無理だから。さっさと点滴やって来い。」
「わ、わか、った…から!耳元で喋らない、で…!」
琥太郎くん達の部屋に戻ると、疲れ切ったであろう琥太郎くんもスヤスヤと眠りについていて、まきをさんと須磨さんが着替えをさせてくれていた。
それを横目にお母さんの点滴に解熱剤と抗菌薬を注入すると腕に刺す。
薬液が体に入っていってるのを確認すると後ろにいた宇髄さんに抱き上げられた。
「悪ぃけど、あと頼むわ。ちょっと俺、ほの花抱いてくっからよ。」
「ちょーーっ?!何言ってんの?!?!馬鹿なの?!?!」
あろうことか勢揃いしている六人の前で恥ずかしげもなくそんなことを言い退けた宇髄さん。琥太郎くんとお母さんが寝てくれていたことだけが唯一の救いだ。
しかし、呆れたようにこちらを見て手を振っているだけの彼らに絶望する。
(…恥ずかし過ぎて事が終わった後に顔合わせにくいじゃん…)