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陽だまりの先へ【鬼滅の刃/音夢💎】R指定有

第19章 まだ見ぬ先も君といたい。【其の弍】※




手を洗いに行くと言って出て行ったほの花を見送ったが、その後ろ姿が消えてしまいそうなほど儚く感じて、思わず立ち上がり気付かれないように後をついて行った。


勘違いならそれでいい。


ただ


どうしても


一人で泣かせることだけは絶対にしたくなかった。


静寂に包まれた廊下はほの花の足音しかしない。後ろから見る彼女の背中はやはりいつもより小さくて細っこく見える。
でも、特に泣くそぶりも見せずに洗面所に着くと淡々と手を洗い出したほの花に勘違いだったか…と部屋に戻ろうと踵を返し出した時こぼれ落ちるように出た言葉に目を見開いた。



「…怖かった…っ…ひっく…。」


そりゃあそうだ。いきなり設備も器具も揃ってないところであんなことになって、自分しか医療者がいない。
あの細い肩にどれほどの重圧と責任がのしかかっていたか。俺なんかには計り知ることもできない。


思わず後ろから抱きしめた体はいつものほの花なのにいつもよりも小さく感じた。
絶対一人で泣かせない。
泣かせたくない。
そう思って来たのに一人で抱え込ませたことには変わりない。

"泣いてない"という彼女の強がりを"休憩"だと言ってやれば少しずつ弱音を吐き出してくれるほの花の言葉をひとつも聞き流すまいと聴き入った。


「…じぶんの、っ、目の前で…っ、また、っ、ひとが死んじゃう、んじゃないか…って…こわか、ッたっ…!」

「……そうだよな。怖かったよな。でも、アイツは生きてる。お前のおかげだ。だからお前はもっと胸を張っていい。」

「…子どもっ、だから…後遺症、とか残ったら、って怖くて、頭の、中で、何回も、何回も、何回も…麻酔の分量の、計算して、疲れちゃ、た…。」



計算式なんて全く分からないのに聞けば聞くほどほの花が全神経を張り巡らせて処置に当たっていたことを知って、その気苦労を考えると頭が下がる想いだった。


それなのにあの場面で自ら心拍数を下げて落ち着かせて処置に当たったことを考えると疲労感は一入だろう。


少しでも疲れが取れたら…と必死に抱きしめたが暫くほの花の涙が止まることはなかった。


それでも、泣き止むまでずっと抱きしめ続けた。
ほの花が自ら離れるまで離すつもりもなかったから。


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