第19章 まだ見ぬ先も君といたい。【其の弍】※
宇髄さんが持ってきてくれたお酒を琥太郎くんの患部に振りかけると染みたのか少し顔を歪ませる彼。
(…やっぱり止血程度の効果しかないか…。)
麻酔は痛みを感じなくさせるだけで無く、止血効果もあるので恐らく今抜いても大量出血は免れるかもしれないが、痛みは感じるだろう。
しかし、これ以上麻酔の量を増やすのはちゃんと琥太郎くんの体を術前検査もしていないのに薬師としてはできない。
「宇髄さん、小刀炙ってもらえますか?」
「ん、分かった。」
彼の体のことを考えるとやはり麻酔は適当ではない。しかし、少しでも痛みを和らげるために私は薬箱から痛み止めを取り出した。
「琥太郎くん。これ飲んで。痛み止め!苦いしまずいけど、割と即効性あるから。」
「は?んぐっ、むぐ…っ!??!?!に、にっげえーーー!」
「そうなのよ。私も嫌い。この薬。ごめんね?」
無理矢理口に押し込むと淡々と再び手の消毒をして、宇髄さんの小刀を待つ。
やはりもう少し子ども用の薬も作ろう。私も嫌だし、即効性を重視しすぎて本気でまずい。
「ほの花、準備できたぞ。」
「はい!よし、琥太郎くん!覚悟を決めて!行くよ!」
「ちょ、ちょ、ちょっと待て!お、おい!」
私は彼の体を足で押さえると、木の破片が刺さっている患部に向けて小刀を入れた。
痛みを訴える声が響き渡ると思いきや、ちっとも聞こえてこない。
もしや、失神した?チラリと様子を確認すると口を真一文字にして目に涙を溜めて必死に我慢をしている琥太郎くんが目に入った。
口元は震えてしまっていて、可哀想になるくらい。
私は慌てて手拭いを出すと彼の口に持っていき、突っ込んだ。
「まだ乳歯があるでしょ?永久歯だって下手したら食い縛ると歯が欠けちゃうからこれ噛んでおいて。刀はもう使わないから引き抜くよ。」
涙目でコクンと頷く彼を見てから私は刺さった破片を抜き取ると、急いでガーゼで圧迫止血をする。
思った通り、そこまでの出血はしてこないので、麻酔の効果はあったと言えるが痛みはあるだろう。
それでも、ここまで一言も弱音を吐かない彼には驚きしかない。