第19章 まだ見ぬ先も君といたい。【其の弍】※
薬箱を確認するが、ちゃんとした器具は此処ではする必要がなかったので買い揃えてないし、必要であれば蝶屋敷で処置することがほとんど。
エタノールも足らないかもしれない。
でも、迷ってる暇はない。
すると後ろの襖が開き、大好きな顔が目に入った。その瞬間、急にホッとして体の力が抜けていくのを感じた。
(…そうだ、私がやらないと。)
私は入ってきたばかりの宇髄さんに向かい、状況を説明する間もないまま彼に声をかけた。
「宇髄さん、この屋敷で一番強いお酒持ってきてください!出来るだけたくさん!あと、一度も使ってない小刀か包丁、出来るだけ小さいもの持ってきてください!」
「は、…?お、おお…、わかった。ちょっと待ってろ!」
狼狽えながらも状況を見るとすぐに探しに出ていく彼を見送り、薬箱から麻酔薬を取り出す。
強い薬だから子どもにはあまり使用したくないので、ほんの少量を注射器に注入すると傷口に打ち込むが、急な痛みに顔を顰める彼に出来る限り声をかけた。
「ごめんね…痛いね、大丈夫だよ…。絶対助けるから。」
ビクッとする体を抑えつけて規定量の注入を終えると、彼の瞳と視線が絡んだ。
「…ほの花…?」
できれば終わってから目が覚めた方がよかったかもしれない。今からめちゃくちゃ怖いことをするというのに正直、この子は運が悪すぎる。
しかし、起きてしまったものは仕方ない。
彼の頭を撫でると自分の緊張感が伝わらないように極力優しい声色で話しかけた。
「大丈夫?ちょっと今から足に刺さった木を抜くから。なかなかの大きさだから手術みたいになるけど、大丈夫だからね。」
「…は…?!そ、そんなのちょっと抜いてくれれば…。」
「このまま抜くと出血多量で死ぬかもしれないから。私の言うこと聞いて?ね?」
まだ10歳くらいの子どもだ。
怖いに決まってるし、酷なことを言っていると思ってる。
それでも起きてしまったのならば受け入れなければこのままにしていれば何れ左足は壊死して死ぬ。