第19章 まだ見ぬ先も君といたい。【其の弍】※
「ほの花、二人を連れて俺の屋敷に帰るから悪ぃけどお前は歩いてくれ。」
「あ…うん!もちろん…。」
''悪ぃけど"、なんて宇髄さんが言うことはない。
今回は私が無茶したせいで迷惑かけてしまったのだから。
それなのに二人のことがなければ私を抱えてくれるつもりだったらしい優しい宇髄さんに胸が締め付けられた。
(…心配かけちゃったんだな…。)
あんなに怒った宇髄さん初めて見た。それなのにあんな風に後先考えずに無茶しちゃって恥ずかしい。
昨日、お弁当を渡した時の宇髄さんは折角喜んでくれていたのに水を差すようなことを自らしてしまって恥ずかしくて仕方ない。
お母さんはフラフラだし、いつも元気な琥太郎くんでさえ体力を奪われてぽけーっとしている。早く帰って寝かせてあげないと。
それに今回は、助けに行って私はどうするつもりだったの?
あの家にいるのは危険だったし、結局宇髄さんに助けを求めて家に置いてもらうことしか自分にはできなかったはず。
自分がいかに考え無しだったか漸く分かった気がする。
前を歩く背中が離れて行かないように私は必死について行くけど、その背中について行って良いのか分からなくなるほど自分の浅はかさに嫌気が差していた。
(…本当わたしって馬鹿だな…。)
それでも、彼と離れたくない一心で歩幅の違いを小走りでついていくしかできない。
帰ったら私だってやることがある。
二人が怪我をしていないか確認して、看病しなければ。
宇髄さんは警護の後で疲れているんだから私がしっかりしなきゃ。
こぼれ落ちそうな涙を振り払う。
泣く資格なんて無い。
今回は私が悪いのだから。
「…ほの花。」
真っ直ぐに前を見据えたところで宇髄さんがチラッと私を見るので視線を絡ませた。
「お前は大丈夫か?」
「え?私?」
「怪我は?」
その言葉に目を見開いた。あんなに心配かけて、現在進行形なのにまだ彼はこんなにも優しくしてくれる。
上がってきそうな涙を飲み込むと笑顔を作り、「私は大丈夫」と伝える。
やってしまってことは消せない。
取り返すんだ。私の出来る方法で。