第19章 まだ見ぬ先も君といたい。【其の弍】※
暴風雨が酷くて警護どころじゃなかったので、早めに切り上げて帰ってきたのに、ほの花の部屋がもぬけの殻。
外は暴風雨だ。厠でも行ったかと思い、暫く待ってみたが帰ってこない。
まだ明け方だし、他の奴らの部屋にいることはない。俺の部屋にもいない。
まさか…外?
そこまで考えると、ほの花が慌てて外に行くようなことなど一つしか考えられなくて俺も慌てて外に出て川沿いに向かった。
隊服は綺麗に畳まれたままだったし、舞扇も置いてあった。着の身着のまま行ったのは明白。
しかし、ほの花が慌てて行ったのも肯ける。
この暴風雨の中、あのオンボロの家が耐えられるとは思わない。下手したら流されてる。
乗りかけた船だ。確かに俺もあの二人のことは気になったが、それよりもほの花が無茶しないかということのが気がかりで仕方なかった。
案の定、琥太郎を助けようとしたはいいが、暴風に煽られて川に落ちたところで発見して慌てて引き上げた。
間際に放たれた俺の助けを呼ぶ声は俺にちゃんと届いたが、助けられたのは偶然だ。
もし、少しでも遅かったら…そう考えると怖くてたまらない。
今回ばかりはきちんと言わねぇといけないと思い、琥太郎を制してほの花に向き合う。
「ほの花。今回は助かったから良いが、俺だっていつも間に合うわけじゃねぇ。そうなったら琥太郎だってどうなってたかわかんねぇだろうが。」
「…はい。ごめんなさい。」
「お前は優しいからこうなることは予測できるが、俺のいない時にすんな。俺がお前のことを大切なように、琥太郎の母ちゃんだって琥太郎が大切なんだ。絶対に無茶だけはすんな。生きてなきゃ何の意味もねぇぞ。」
コクンと頷くほの花はしょぼんとしてしまっていて少し言いすぎたか…とも思ったが、今回は仕方ない。
ほの花が悪ぃ。
俺はほの花を降ろすと琥太郎と母親を抱え直して自分の屋敷に連れて帰ることにした。
本当はびしょ濡れの夜着が短く破られた状態のほの花を歩かせたくはなかったが、琥太郎も寒さで震えているし、病人が二人もいるのだから致し方ない。