第19章 まだ見ぬ先も君といたい。【其の弍】※
──バシャン
と言う音と共に川に落ちた私は必死に琥太郎くんの体を抱えた。
「ご、ごめ、!大丈夫?!」
「う、うん。ごめんな、ほの花っ、俺がいるから…」
「何言ってるの!!必ず助けるから!」
…とは言え、私の握力では二人分の体重を支えるので精一杯で、再びこの岩の上に乗っかるのは至難の業。
一度自ら流されて違うところに掴まり直した方がいいか?
…いや、駄目だ。それだと私まで体が冷えて肝心な時に引き上げられないかもしれない。
だからといってこのままだと同じこと。
どうしよう
どうしよう
どうしよう
こんな時に浮かんでくるのは宇髄さんの顔。
絶対怒られる。でも、怒られても良いから助けてほしい。
このまま会えないなんて絶対嫌だ。
「…助けて…宇髄さん…!!」
そんなこと此処で言ったところでどうしようもないのに。
どうしようもない筈なのに、次の瞬間引き上げられたのは見慣れた逞ましい腕。
そして心配そうに顔を歪ませる宇髄さんの顔が目の前にあった。
いつの間に川縁に着いていたのだろうか。
早業すぎて全くわからない。
それでも生きていることに心底ホッとした。
しかし、それより先に琥太郎くんが気になって腕の中を見た。
「…琥太郎くん!大丈夫?!」
「…何とか…。」
「…よ、良かった…。」
「全然良くねぇけどな。お前、何してんだよ!一歩間違えれば自分も死ぬとこだったんだぞ?!後先考えずに突っ走るところ直せ!」
あまりの剣幕にビクッと肩を震わせた。
いつも結局、宇髄さんは優しくてこんな風に怒鳴ったりしないのに…。
だけど、今回は自分が悪いのは目に見えているので顔も見れずに謝ることしかできなかった。
「…ごめん、なさい。」
「な、なぁ、俺を助けようとしたからだから…そんな怒んなって…。」
「うるせぇな。お前は黙ってろ。」
そう言うと琥太郎くんを黙らせて私に再び向き合った。